小林製薬の「紅麹」サプリをめぐる健康被害。その影響は小林製薬だけでなく、取引のあった多くの業者に及んでいます。

問題発覚から1カ月。業者は今、深刻な風評被害に直面しています。

■問題の紅麹とは異なる品番 しかし念のため自主回収

【キミセ醤油 永原琢朗社長】「これが(返ってきた)商品の一部ですね」

岡山市の食品会社「キミセ醤油」の敷地内に、大量に積み上げられた段ボール。

この中に入っているのは、人気商品の「紅麹みそ」。現在、自主回収中で、今後これらは全て“廃棄処分”となります。

【キミセ醤油 永原琢朗社長】「つらいですよ。うちの会社を出ていって、お客さまに喜ばれて『春になったら楽しみにしてるよ』って言ってた味噌がこういう形で返ってきて、今から廃棄処分しなきゃいけないというのは、断腸の思いですね」

小林製薬が製造していた「紅麹」サプリメントを摂取した人に健康被害が相次いでいる問題。

「キミセ醤油」は、2つの商品で小林製薬の紅麹原料を使っていましたが、問題となっているものとは品番が異なり、健康被害は確認されていません。

しかし、念のための措置として自主回収を行っていて、コールセンターでは客からの問い合わせの対応を今も行っています。

問題発覚直後は電話が鳴りやまず、10個ある回線がパンクする事態に。

小林製薬によると紅麹原料は、サプリ用と食品用に分かれて出荷されていて、健康被害が出たのはサプリ用の原料。

キミセ醤油が使っていたのは食品用で、健康被害の報告はありません。

しかし「体に悪い成分が入っているのでは」という問い合わせは後を絶たず、さらには紅麹を使用していない商品についても苦情が寄せられているといいます。

【キミセ醤油 永原琢朗社長】「『もう使わない』と言う方もおられます。残念です。この話が収まった後に残った印象が『キミセ醤油が何か悪いことしたんじゃないか』とか、そういうのが残ってしまうのは間違いなんで、不本意です」

返品作業や客への説明に追われたことで、通常の営業活動を行えず、今月の売り上げは例年の4割ほどになる見通しです。

小林製薬からは「真摯に対応する」などと連絡があったといいますが、どこまで補償されるのか不安は拭えません。

【キミセ醤油 永原琢朗社長】「失った目に見えない信用はどうなるのか。これから買っていただけるはずだったお客さまとのご縁がなくなる場合もある。その場合はどうしてくれるのか。小林(製薬)のしかるべき方と膝を詰めて相談したいし、誠実に対応してほしい」

■紅麹使用の“看板商品”を失ったベーカリー 小林製薬から連絡なし

キミセ醤油と同様に、多くの企業が商品の自主回収などに追われています。

厚生労働省は小林製薬が製造していた紅麹原料を使用する事業者225社を公表。

しかし、公表されたリストに載っておらず、置き去りにされている事業者がありました。

【パンのカワバタ 川端宏明代表】「われわれ末端の使用者のところなんて何にも(連絡は)ないでしょうね。ほったらかしですよね」

Q.これは何ですか?
【パンのカワバタ 川端宏明代表】「紅麹を使った食パン。全部お客さんに『すみません』と言って、回収させていただきますと事情を説明して、引き取った分ですね。一生懸命作ったものが全部パーですわ」

滋賀県東近江市にある「パンのカワバタ」。

30年間販売していたのが「いのちのパン」です。仕入れ先を通じて小林製薬の「紅麹」を使用し、商標登録もしている看板商品でした。

使っていた紅麹は問題があったものとは品番が異なり、健康被害も確認されていませんが、この店でも念のためパンを自主回収し、製造も中止しました。

しかし、小林製薬からは補償の話を含めて一度も連絡が来ていません。

厚生労働省が発表した小林製薬の紅麹原料を使用する事業者225社に仕入先は含まれていたものの、「パンのカワバタ」の名前はないのです。

このように、国や小林製薬が紅麹原料の間接的な取引先として把握できていない事業者は多くあるとみられます。

この状況について、小林製薬は次のように回答しています。

【小林製薬】「弊社の紅麹原料を使った企業から情報を集約し、個別に話を聞いている状況です。責任をもって対応します」

常連客との取引も多い「パンのカワバタ」。今は紅麹を抜いた食パンを届けています。

【常連客】「毎日、朝はこの(紅麹)パンやもん。びっくりしたもん、今までどうもないのにな。急にやめてくれって言われて。えーって思った。体もどうもないんですよ」

店の看板を失っただけでなく、パンの原材料価格の高騰もあり、今後の営業には不安を感じています。

【パンのカワバタ 川端宏明代表】「今まで普通にやってきたことがどうしてできないんだろうっていう悔しさ、怒り。そういうものですよね」

苦悩の日々が続く企業。1カ月たっても影響は深刻なままです。

■他の商品や信用問題は被害額の算出が困難

小林製薬の紅麹原料を使用したことによって、“紅麹を使っていない商品”にも影響が出ているということですが…。

【コメンテーター稲村和美さん(前尼崎市長)】「原因の究明をしっかり進めて、対策を明確にする。この対応に時間がかかればかかるほど、こうやって本来は被害が確認されていない大丈夫なものも自主回収したり、消費者が不安に思ったり、被害が拡大してしまうことになると思います」
「やはり対策のスピードアップが強く求められると思いますし、そこがはっきりすれば、消費者の方々も冷静に判断をしていけると思います」

改めて小林製薬の紅麹原料についてですが、食品の着色用のものは健康被害が確認されていないということで、事実を正しく認識する必要があります。

しかし問題が広がっていく中で、取引企業はどこまで補償されるのでしょうか。

【関西テレビ 神崎 博報道デスク】「製品の返品や回収した製品代や、回収費用までは可能だと思うんですよ。例えば関連する他の商品の被害や、信用の部分においては額を算定するのが難しいと思います。ですので、小林製薬が業者にどこまで補償するのか、それによって業者への影響は左右されると思いますね」

当初は18億円の補償額が算出されていましたが、現在は算出することができないとのことです。

これ以上影響が広がらないよう、小林製薬の誠実な対応が求められています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。