(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)は、景気が大きく悪化した場合は10月の利下げを検討することを辞さないが、包括的な情報が入手できるのは12月会合だと、ラガルド総裁が述べた。

総裁の発言は、ECBが12日の利下げ後の次の一手を12月まで待つ方向に傾いていることを示した。

しかし、ECBはデータ次第のアプローチを約束しており、10月利下げの可能性も排除していない。当局者らの考えを知る関係者によれば、四半期に1回の利下げペースからECBが脱却するには、成長見通しが著しく悪化するか、米当局が積極的な緩和を実施することが必要だという。

ラガルド総裁は13日、ユーロ圏財務相会合に出席したブダペストで記者団に語り「われわれは予測のための多くのデータを持っており、予測の合間にデータも受け取っている。すべてのデータに目を配り、基本シナリオと比較して大きな変化があれば、再評価を行う」と述べた。

同日先に発言した複数の当局者も、追加利下げについて慎重な姿勢を示した。

フランス中銀のビルロワドガロー総裁は「われわれは、金融政策による景気抑制の度合いを徐々に、そして適切に引き下げていくべきだ」と述べた。「しかし、そのペースは極めて実際的でなければならない。特定の金利軌道をあらかじめ約束するわけではないし、今後の会合に向けて完全な選択の自由を残している」と続けた。

ECB、インフレが目標下回るリスクと上回るリスク注視-仏中銀総裁

 

ECB当局者らは8月のユーロ圏インフレ率が2.2%と目標の2%に近づいたことを好感している。サービス部門に長引く物価上昇圧力を警戒する向きも多いが、景気悪化で新型コロナウイルスのパンデミック前のようにインフレ率が目標を下回る可能性についても懸念がある。

ラトビア中銀のカザークス総裁は「金融市場を見る限り、10月に利下げが行われる可能性は大きくない。しかし同時に、経済に予期せぬ打撃があり、現在の予想よりも経済が著しく弱く感じられ、インフレ率も著しく低下するようであれば、もちろん利下げを検討する可能性もある」と語った。

市場では10月に利下げ実施される可能性は25%とみられている。

リトアニア中銀のシムカス総裁は、利下げは継続するものの「さらなる決定にはなお慎重さが求められる」と述べた。

インフレは「落ち着きつつ」あり、「その軌道は追加利下げ実施の必要性を示唆している」とした上で、「金利低下は続く見直しだが、ペースはデータ次第だ」と語った。

シムカス氏は、サービス分野のインフレについては「かなりの不確実性」があると指摘。スロベニア中銀のバスレ総裁とエストニア中銀のミュラー総裁も同じリスクを強調した。

ECBミュラー氏、利下げは景気に寄与-インフレ鈍化の確信強まる

ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁は「インフレ見通しは極めて良好だ」と述べ、「インフレ率は来年末までに目標の2%に戻ると想定しており、データもそれを裏付けている」述べ、「データのポートフォリオは、昨日の利下げを正当化する内容だ」と付け加えた。

しかし、12日に公表された四半期予測では、2024、25、26年の成長率見通しが下方修正された。

実際、年初の一時的な復活の後、欧州の成長の勢いは衰えつつあり、製造業は依然としてエネルギーコストの上昇と外需低迷に苦しんでいる。待望の消費者主導の景気回復はまだ実現していない。こうした状況が機敏な行動を促すとの見方もある。

フィンランド中銀のレーン総裁は「ユーロ圏の成長は依然として鈍く、成長に対する下振れリスクは夏の間に高まっている。そのため、今後の会合で金利を決定するに当たって、行動の自由と柔軟性を完全に維持する」と述べた。

仏中銀のビルロワドガロー総裁もこれに同意し、「米国とは異なり、われわれは物価と雇用の二重の使命を負っているわけではないが、インフレ率2%の目標を中心に上下対称的な使命を負っていることは明らかだ。目標をオーバーシュートするリスクと同様に、アンダーシュートするリスクにも注意を払わなければならない」と語った。

原題:Lagarde Signals ECB Open to October Cut But December More Likely、ECB Officials Stick With Call for Gradual Cuts in Rates (1)(抜粋)

--取材協力:Jan Bratanic、Ott Tammik、Leo Laikola、Milda Seputyte.

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