米俳優のジュリア・ロバーツさん=2024年10月19日、AP

 投票先を夫婦間で教え合うべきか――。米大統領選(5日投開票)に向けて民主党のハリス副大統領の支持団体が制作した選挙CMが、そんな論争を巻き起こしている。

 女性の自立を当然視する意見がある一方で、保守派は「夫婦の分断を図っている」と反発。共和党のトランプ前大統領は、ナレーションを担当した俳優のジュリア・ロバーツさんに「失望した」とかみついた。

 CMは、トランプ氏の支持者らしい男性から「次は君の番だよ」と促された妻が、投票ブースに向かう場面を描いている。ロバーツさんの声で「あなたはどう投票してもいいんですよ。誰も知ることはないのだし」と説明が流れる。ハリス氏に投票後、「正しい選択をしたかい」と聞かれると、妻は笑顔で「もちろんよ」と答えた。

 CMは、保守的な地域に住む女性にハリス氏への投票を呼びかける狙いがある。ハリス陣営は、トランプ氏の乱暴な言動を嫌ったり、人工妊娠中絶を選ぶ権利を重視したりする共和党員の女性からも支持が得られると計算している。

米中西部オハイオ州で大統領選の期日前投票に臨む女性=2024年10月31日、AP

 一方、保守派は「女性にうそをつくことを奨励している」「不愉快なCMだ」と反発。トランプ氏も2日の保守系テレビ局FOXニュースの番組で「妻が夫に投票先を言わないなんて想像できるか。たとえ夫婦仲が悪くても、投票先は言うだろう。愚かなことだ」と批判した。

 大統領選はハリス、トランプ両氏の大接戦が続いているが、最終盤になって「黒人男性のハリス氏への支持が伸びていない」「女性がトランプ氏を敬遠している」など性別に焦点を当てた報道が増えている。

 背景にはジェンダーや家族のあり方を巡る考え方の違いもあり、トランプ氏が「女性が望むと望まざるとにかかわらず、私は女性を守る」と発言した際には、リベラル派が「女性の主体性や権利を理解していない」と厳しく批判した。【ワシントン秋山信一】

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