イスラエルがレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する空爆を継続していることを巡り、米ニューヨークで24日に始まった国連総会の一般討論演説では、中東諸国を中心に戦火の拡大を危惧する声が相次いだ。
パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘で、停戦交渉の仲介役を務めるカタールのタミム首長は「イスラエルがレバノンに戦争を仕掛けている」と批判。ヨルダンのアブドラ国王も「(衝突が)エスカレートすることで利益を得る国はどこにもない」とし、イスラエルに即時の攻撃中止を訴えた。
トルコのエルドアン大統領はガザ地区の戦闘について、「子どもたちだけでなく、国連のシステムも死んでいる。西側諸国が擁護する価値は死んだ」と述べ、批判の矛先を国連にも向けた。グテレス事務総長はこの日の演説で「レバノンを次のガザにすることは許されない」と訴えた。
ヒズボラを支援するイランのペゼシュキアン大統領も24日、就任後初となる一般討論演説に臨んだ。「国際社会は地域と世界に飛び火する前に、レバノンにおけるイスラエルの野蛮な行為を終わらせるべきだ」と述べ、イスラエルの動きを真っ向から批判した。
また、一連の攻撃で数千人の死傷者が出ているとして「国家的なテロ行為を無視することはできない」と強調。「この恐ろしい悲劇を終わらせることを阻止した者が、全ての結果の責任を負う」と指摘した。
一方、ペゼシュキアン氏は、2015年に米英仏独露中の6カ国と結んだ「核合意」の再建に向けて、前向きな姿勢を示した。
核合意は、イランが核開発を制限する代わりに欧米が経済制裁を解除する内容だったが、米国のトランプ前政権は18年、合意から一方的に離脱し、制裁を復活させた。
ペゼシュキアン氏は「一方的な制裁は罪のない人々を標的にしたものだ」として、当時のトランプ政権を批判。その上で「我々は(核合意の)参加国と関わる用意がある。完全に、かつ誠実に(核合意が)履行されれば、他の問題の対話も可能になる」と述べた。【ニューヨーク中村聡也】
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