日米首脳会談で経済の連携の強化をアピールしたい日米ですが、懸案となっているのが日本製鉄によるUSスチールの買収計画です。地元を訪ねると、住民の中でも買収への賛否が入り混じっていました。

「鉄鋼の町」として知られたピッツバーグ。日本製鉄から買収提案を受けているUSスチールの地元です。

記者
「USスチールの製鉄所です。こちらはおよそ150年前、1875年から稼働しているという大変歴史ある製鉄所です」

アメリカを代表する企業だったUSスチール。製鉄所の近くに住む人たちは、日本企業による買収に拒否感をあらわにしました。

製鉄所周辺の住民
「とても不満です。USスチールはアメリカが本拠地の会社です」
「USスチールはアメリカ資本の会社であるべきです」

USスチールの従業員の大半が加盟する全米鉄鋼労働組合のトップも強く反対しています。

全米鉄鋼労働組合 マッコール委員長
「日本製鉄は適格な買収者ではなく、買収計画は完全にやり直されなければなりません」

労働組合を支持基盤とするバイデン大統領も先月、買収に慎重姿勢を表明しました。首脳会談でアピールしたい日米の連携に水を差しかねない状況になっています。

ただ、地元の人たちも買収に反対一色というわけではありません。

NPO「リバーズ・オブ・スチール」 ロン・ベラフさん
「製鉄所はこの地域、この国を築き、世界に大きな影響を与えました」

こちらはUSスチールの製鉄所の跡地です。連邦政府の歴史建造物に指定されていて、保全と管理を行うNPOのロン・ベラフさんは観光客らにその歴史を伝えています。

NPO「リバーズ・オブ・スチール」 ロン・ベラフさん
「鉄鋼業は約150年にわたって地域の経済を支え、世界中から何千何万もの人々を集め、その家族を養いました」

街の発展に大きな役割を果たしたUSスチールですが、1970年代から急速に衰退し、この製鉄所も1986年に閉鎖されました。

ロンさんは日本製鉄による買収を通じてピッツバーグが「鉄鋼の町」として、再び活性化することを期待しています。

NPO「リバーズ・オブ・スチール」 ロン・ベラフさん
「変化は何かの終わりではなく、新たな始まりだと考えています」

街の中心部でも、買収に賛成する声が多く聞かれました。

「買収はショックかもしれませんが、地元経済にはプラスだと思います」

買収の可否を最終判断するのはバイデン大統領です。同盟国の日本企業による買収を認めるのか、差し止めるのか。今後も引き続き懸案として残ることになります。

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