韓国中西部の忠清南道で見つかった北朝鮮が飛ばしたとみられる風船=韓国国防省提供

 韓国で28日以降、北朝鮮から大量の風船が飛来している。韓国軍合同参謀本部によると、29日午後4時時点で約260個に及ぶといい、化学兵器や爆発物に対応する処理班を出動させて対応する事態になっている。

 風船は直径が70センチ以上あり、一部には風船を空中で割るタイマーのようなものも見つかった。韓国国防省は「国際法に明白に違反し、韓国国民の安全を深刻に脅かす行為だ」と中止を求めている。

 韓国の脱北者団体は今月、北朝鮮に向けて金正恩(キムジョンウン)体制を批判するビラやK-POPなどの動画を保存したUSBメモリーを風船で大量に飛ばした。これに対して北朝鮮国営の朝鮮中央通信は26日、「国境地域でビラと汚らわしい物品を散布する韓国の卑劣な心理謀略が行われている」と非難する国防省次官の談話を伝えた。

 風船に取り付けられていたのは汚物やごみが入った袋だった。韓国メディアは、汚物は色や臭いからふん便とみられると伝えている。北朝鮮は26日の談話で「片付けにどれほどの努力がかかるか直接体験するだろう」と風船について警告していた。

 2016年の朴槿恵(パククネ)政権下でも同様の飛来事例があり、その際は落下してきた風船などにより車両や住宅が破損する被害が出た。

 韓国から北朝鮮へのビラ散布を巡っては、南北融和を掲げた文在寅(ムンジェイン)前政権下の20年に散布を禁じる法改正が行われた。しかし昨年9月に憲法裁判所が「表現の自由を制限する」との違憲判断を出し、効力を失っている。【ソウル日下部元美】

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