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 台風10号により、鹿児島では暴風・波浪・高潮の特別警報が相次いで発せられ、宮崎市でも竜巻とみられる突風でけが人が出た。気象庁担当者は会見で「これまでに経験したことのないような暴風、高波、高潮が予想され、最大級の警戒が必要」と話している。今後はさらに発達しながら、北上していくおそれがある。

【映像】ゲリラ雷雨で水没した都内の駅

 台風に限らず、この夏は各地で、短時間に大量の雨が降る、ゲリラ雷雨が頻発している。先週は東京都心部を猛烈な雨が襲い、新宿駅付近では巨大な水柱が吹き上がり、市ヶ谷では地下鉄駅構内に大量の雨水が流れ込んだ。東京・港区付近では1時間に100ミリの雨が降ったとみられ、ハザードマップで浸水の危険が指摘されている地域では、瞬く間に道路が冠水し、床上浸水などの被害が出た。

 被害地域の住民からは嘆きの声が相次ぐが、X上には「住む場所は災害リスクを考えて選ぶべき」「危険な場所に住み続けるなら、備えと覚悟を」といった声も。日本が抱える自然災害とどう向き合えばいいのか、『ABEMA Prime』では危険区域に住む人と考えた。

■台風10号が九州直撃「竜巻が起きて屋根が剥がれた」

 宮崎市の海沿いに住む森美樹さんが、台風10号の現状について「すぐ近くに避難所になる公民館があるが、開設していない状態だ。午前中に突然の停電はあったが、すぐに復旧した。雨も風も激しくなかった」と話す。(以下、情報は8月28日・午後9時時点)。

 一方で友人からは被害情報が寄せられていると語る。「宮崎市北部の佐土原町で竜巻が起きたようで、屋根が剥がれた写真が送られてきた。よく氾濫する大淀川の水位が上がっている写真も送られてきた」という。避難指示は宮崎市内全域に出ているものの、「こぞって避難している感じではなさそうだ」。今は避難所の開設状況を確認している状況だが、「いきなりこの強風の中で避難できるのか」と心配した。

 森さんは東京に生まれ育ち、宮崎の海沿いに移住した。ハザードマップのレッドゾーンからは地図上で1〜2mm外れているように見えるが、「危険は承知。どこに住んでいてもリスクはある」と考えている。「台風では氾濫被害を懸念するが、氾濫しやすい川の近くではない。ただ、先日の大きな地震はさすがに心配になって、猫を連れて車で高台に避難した」そうだ。

■大型地震でも冷静に備えて行動「安全な場所を探して住んでも…」

 想定しうる災害は台風だけではない。8月8日には日向灘で最大震度6弱の地震が起き、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が出された。森さんは「いつ起きるかわからない地震や津波を気にして、安全な場所を探して住んでも、そこが安全とは限らない」と語る。「山に住んでも崖崩れがある。マンション上層階でも家具が倒れる。『自分がどこに住めば幸せか』を優先している」という考えの持ち主だ。

 先日の地震発生時には、会社に居たが、すぐ自宅に戻った。「猫をピックアップして、土地の権利書などを非常用のリュックに入れ、車に乗って高台のガソリンスタンドへ行き、満タンにした。避難待機時には落ち着いていて、『猫のトイレがないな』などと考えた。戻ってからの1週間で、非常用トイレなどを買い込んだ」と冷静に対応できたという。

 台風については、状況の変化もあるようだ。「私は移住18年目だが、台風がそれてきている。地球温暖化や黒潮の流れの影響で、移住してからの直撃は、おととしの台風14号が初めてくらい。以前は『台風銀座』と呼ばれていた宮崎だが、かする程度になってしまった」と違いも感じている。

 沿岸部は自然災害のリスクが大きいと考えられるが、それでも住む理由は何なのか。「自然が好き。東京では比較的ど真ん中に生まれ育ったが、今回の都心の水害もそうだが、いつ何が起きるかわからない」と述べた。

■頼りにしたいハザードマップに課題も 研究者「色がついてないところでも災害は起こる」

 災害時に頼りになるハザードマップだが、必ずしも完全ではない。だいち災害リスク研究所所長の横山芳春氏は「色がついているところは要注意だが、色がなく危険とマークされていない場所でも、土砂崩れや浸水が起こる。国も色がついていなくても、崖や川の近くなら避難を呼びかける」と解説する。

 地下鉄改札などが浸水した東京・市ヶ谷駅は、ハザードマップ上で水没が想定されるエリアではなかった。「私の仮説だが、神楽坂や山の手から流れてきた水が、江戸城の外堀の先に、フェンス柵の基礎があり、そこでせき止められたのではないか。ハザードマップ作成時に想定していなかった人工物や、作成後の造成などにより、予想される最大雨量にあわないケースもある。色が付いていない場所でも、災害が起こる危険性はある」と語った。

 台風の進路変更や、ゲリラ雷雨の頻発などで、ハザードマップを作り直す必要はないのか。「過去の履歴ではなく、高低差やシミュレーションによって作っている。ただ、『今回、冠水や浸水が起きなかった地域だから大丈夫』ということはない」と注意喚起した。 災害の危険があるエリアに住むことを、どう捉えるか。「危険な地域に住むこと全てをダメだとは思わない。『どういうリスクがある』と知り、『どういう時に避難するか』がわかっていれば良い」と、住む上での情報整理が重要だと説いた。

■備えるより“安全な土地を選ぶ”選択「対策する方が復旧コストより安い」

 あらゆる場所で災害リスクがある現状で、どのような場所に住めば良いのか。「理想論としては、安全な地域への移住を勧めた方がいい。先に対策する方が、復旧コストより安くなる。命だけは後から取り戻せない。被災者も『こんなことになるなら住まなかった』と言うことが多い」。

 東京都内にもリスクの高い土地がある。「城東地域はハザードマップに『洪水が来たら居てはいけない』と書かれているが、大規模洪水でなければ住み続けられる地域でもある。私は千葉県の高台に住んでいるが、洪水や高潮で自宅に影響がない地域のため、避難バッグを持たず、火災保険の水災特約も外している。そういう地域もあることはある」とした。

 その上で、事前にリスクを知り、対策をしておく重要性を語る。「どこの川の洪水か、内水氾濫なのか、海の高潮なのかを知り、どういう時に避難する必要があるかを考える。地震でも『家具を固定しましょう』と言うが、能登半島地震で一番亡くなっているのは家屋の倒壊で、いくら準備しても役立たない場合がある」。

 防災はケース・バイ・ケースだ。「まずは住んでいる場所の災害リスクを知る。それにより、避難する必要があるか、2階に上がればいいかなど、パターンが変化する。在宅避難可能で、1階が水没する危険性があるなら、2階に備蓄品を置けばいい。すぐ津波が襲ってくる地域なら、リュックを持って避難する」と、環境にそった対応を求めた。

 災害リスクの情報は、どのように手に入れればいいのか。「ハザードマップで、土砂災害や水害、津波はわかる。ただ地震は、いつ来るかわからない。まずはどのようなリスクがあるかをハザードマップで知る。ただ現状で『我が家はどうなのか』と相談できる仕組みがないのが課題だ」。
(『ABEMA Prime』より)

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