(ブルームバーグ):米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手(30)を広告に起用した日本企業の株価で明暗が分かれている。広告効果を収益に早期につなげられるかが今後の株価の鍵を握る。
ブランドアンバサダーに大谷選手を2023年12月に起用した人材サービスのディップは、大リーグのシーズンが開幕した3月20日から10月3日まで株価が8.7%上昇した。23年からスキンケア商品の宣伝に大谷選手を起用しているコーセーは16%高だ。一方で4月末に大谷選手との契約を発表した伊藤園は広告費増に直面して8.6%下落、大谷選手とサポート契約を結ぶ日本航空(JAL)も14%安だ。
大谷選手は今シーズン「50-50(50本塁打50盗塁)」の快挙を米大リーグで初めて達成した。ドジャースをナショナル・リーグ西地区優勝に導くスター性が多数の広告起用につながるが、株価寄与には差が出ている。大谷選手は5日からの地区シリーズに進み、勝ち進めばリーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズと11月初までプレゼンスを示せる。企業は今後の広告効果に期待している。
「バイトル」のディップ株急騰、大谷選手がブランドアンバサダー就任
岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一氏はディップについて「会社の理念と大谷選手のいまの姿が結構一致するところがある」 と述べた。社名の由来でもある「Dream(夢)」や「Passion(情熱)」が大谷選手の活躍する姿と似ているとした。また企業規模が小さいことも広告効果を高めているとみている。
効果
ディップは大谷選手を起用する企業で今シーズン株価が堅調だ。大谷選手を起用したコマーシャルは、動画配信サイトのユーチューブで570万回以上再生されるなど会社の知名度向上に寄与した。業績にも効果が表れており、今期(25年2月期)第1四半期の営業利益は前年同期比20%増の40億円と第1四半期として創業以来最高を記録した。
冨田英揮社長は決算説明会で、宣伝効果はすでに大谷選手との契約金よりも大きいと話している。
対照的に伊藤園は今期(25年4月期)第1四半期に広告宣伝費が20%増加、原材料高騰なども重なって営業利益は29%減少した。株価は東証株価指数(TOPIX)の2.4%下落を下回るパフォーマンスだ。
伊藤園IR担当者は、広告費は「戦略的費用」として第2、3四半期では米国での「お~いお茶」の販売数などに効果が出てくるだろうと話した。
博報堂DYメディアパートナーズのイメージ調査では、大谷選手は「知性的」や「夢や感動を与えている」選手で首位だった。
たこ焼き
大谷選手がドジャースに移籍した後は、球団と契約を結ぶ企業も相次いでいる。「銀だこ」のホットランドは5月にドジャースとのスポンサーシップを発表し、ドジャース球場内でたこ焼きを販売している。ホットランドの株価も今シーズンで22%上昇している。
岩井コスモの有沢氏は、球場での販売はブランドの認知度を向上させる効果的な方法と指摘。開拓し切れていない米国市場への進出を試みる上で、意味のある効果をもたらすのではとみている。
関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によれば、今シーズンの大谷選手の経済効果は865億円に上る。個人がもたらす経済効果としては、テイラー・スウィフトさんが2月に行った東京ドームでの公演が4日間で341億円ほどだったと東京都市大学の非常勤講師江頭満正氏は推計した。
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