(ブルームバーグ):米連邦公開市場委員会(FOMC)は17、18両日に開催した定例会合で、主要政策金利を0.5ポイント引き下げることを決定した。労働市場の堅調維持を狙った。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は会合後の記者会見で、0.5ポイントの利下げについて、「今回の決定を受けて『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」とも語った。
FOMC、0.5ポイントの利下げ-積極緩和で経済守る決意表明
これについての市場関係者の見方は以下の通り。
◎マニュライフ・インベストメント・マネジメントのネイサン・トホーフト氏:
- 金利予測分布図(ドット・プロット)が0.5ポイントを超える追加利下げを示唆していないことは、今回がスタートかつ先制的なものであって、0.5ポイントの追加利下げのトレンドや気掛かりな経済を示すものではないとの見方をさらに裏付けている。前回会合で0.25ポイントから開始しなかったことを後悔していることもうかがえる
◎アムンディのパレシュ・ウパダヤ氏:
- 市場はFOMCに0.5ポイントの利下げを迫った。市場はもう一度0.5ポイント利下げの高い確率を織り込もうと躍起になっているかもしれないが、声明文の変更は当局が依然としてデータ次第の姿勢であることを示唆しており、0.25ポイントに減速する可能性もある
◎ケンブリッジ大学クイーンズカレッジのモハメド・エラリアン氏:
- これは単なる0.5ポイントの利下げではなく、ハト派的な0.5ポイントの利下げだ
- 私の疑問は、7月に利下げ見送りを決めた時から何が変わったのかという点だ。今は、このように極めて積極的な利下げを決め、積極的なシグナルが示されている
◎ピクトン・マホニー・アセット・マネジメントのフィル・メスマン氏:
- インフレリスクが低下してきたことを踏まえれば、0.5ポイントの利下げは労働市場のさらなる悪化に対する妥当な予防策だ。さらに、インフレリスクは比較的問題ではないと見受けられ、今回の利下げは初回としては不合理に積極的過ぎるわけではない
◎ハリス・ファイナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏:
- 過去のデータを見ると0.5ポイントの利下げは危機と関連しており、米金融当局は私の予想よりも積極的だった。2025年に経済成長率2%、失業率4.2%、利益伸び率15%という予測を私は危機とは考えていない。従って、来年に予想される利下げの程度になお懐疑的だ
- 市場金利の低下は住宅と雇用を後押しするだろう
- 小型株やバリュー株、景気循環セクターなど、これまでも恩恵を受けてきた銘柄やS&P500イコールウエート指数が追い風を受けると予想
◎キー・ウェルスのラジーブ・シャルマ氏:
- FOMCは政策金利を(0.25ポイントではなく)0.5ポイント引き下げることで、利下げサイクルの開始に当たり、比較的大幅な利下げを見込んでいた市場の期待に応えた
- FOMCはこの日、最大限の雇用を守ることに非常に関心があり、インフレ懸念を事実上、後回しにしたことを示した
- 今のサイクルにおける最初の利下げ幅よりもっと重要かもしれないのは、FOMCのドット・プロットの修正であり、当局が年末までにさらに0.5ポイントの利下げを積極的に行う用意があることを示している
◎エバコアのクリシュナ・グハ氏:
- 最初の一歩で大きな動きは、景気のソフトランディング(軟着陸)に多少の保険をかけることになり、リスクオンだ。小型株や景気循環株、商品、商品通貨といった景気循環に連動するリスク資産に特に恩恵をもたらすだろう
◎ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのサミーア・サマナ氏:
- 0.5ポイントの利下げによりハードランディングの可能性が低下するだろう。経済と企業収益が連動する傾向があることを踏まえると、そうした見通しは株式市場に追い風になる
- ハードランディングの可能性低下に沿う形で景気循環セクターがこの日の相場をリードした一方、ディフェンシブ銘柄は出遅れた
- これは、2025年に米国の大型株と成長株および景気循環株が主導し、株式相場がさらに上昇し得ることを裏付けるものだと考える
◎ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのジャック・マッキンタイア氏:
- 今後は市場予想と米金融当局の対決となり、どちらが正しいかを決めるのはインフレデータではなく雇用データとなるだろう。今回の政策変更はほぼ予想されていたため、金融市場で大きな動きは見られない。今や誰もがデータ依存に戻っている
◎モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏:
- 市場は望むものを手に入れた。その満足がいつまで続くか見てみよう。米金融当局には焦らないという定評があるが、特に経済データの軟化が続く場合、動きがあまりに遅いと受け止められれば失望を招く可能性がある。しかし、今回は役目を果たした
◎ラッファー・テングラー・インベストメンツのナンシー・テングラー氏:
- 50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げは米金融当局のフライングだと思う。後ろ向きなデータに近視眼的に焦点を当てている点を批判する。雇用統計が1回弱かっただけで、この結果に至っている
◎ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのアシシュ・シャー氏:
- 景気抑制的な金融政策を巻き戻すことで、米景気サイクルは長期化し、債券とリスク資産の両方に恩恵をもたらす可能性がある。ただし、投資家はテールリスクに注意を払うべきだ。それでも、安定した経済状況と金利低下というポジティブな要因は「ソフトランディング」のシナリオを固め続けている。安定した経済状況と金利低下により、株式投資の機会は広がるはずだ
◎トグルAIのジュゼッペ・セッテ氏:
- 米金融当局は景気見通しが堅調だと安心させようとする一方で、大幅な利下げを断行した。しかし、この2つは調和しない。景気減速局面での大幅利下げは常に相場の下落が後に続く。きょうが市場のピークだった可能性もある。歴史が示すように、市場のピークは最初の利下げの直前に訪れる。株式には注意が必要だ
◎LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏:
- 株式市場は50bpで緩和サイクルを開始するというFOMCの決定を称賛した。この動きを巡っては多くの議論が交わされていたため、発表は驚きではなかった。しかしFOMC当局者によるガイダンスの欠如は、反対したメンバーが1人しかいなかったにせよ、コンセンサス構築に向けて激しい議論が行われたことを示唆している
◎ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏:
- 米国の選挙後にFOMCは0.5ポイントの利下げを行う可能性が高い。今後発表される経済データは弱めの内容になろう。米経済の不確定要素は住宅市場の動向だ
◎eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏:
- 市場はこの日のFOMC会合結果発表を前に上昇していたことから、相場がやや後退してもおかしくはないだろう。ただ長期的な見通しはなお明るい
- 利下げの賭けが2024年を通して変動する中、堅調な企業利益の伸びとより多くのセクターが見せる力強いパフォーマンスがS&P500種株価指数を次々と最高値に押し上げてきた。景気が持ちこたえ、インフレが再び勢いを増さない限り、金利低下と力強い企業利益の伸びが長期にわたり株価を引き続き押し上げるだろう
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