土地の取引価格の指標となる「地価」が9月17日に公表された。福島県では、住宅地は災害の影響などもあり下落が続いているが、商業地には明るい兆しも見えてきている。

<住宅地 県内最高価格は郡山市神明町>
福島県内の住宅地で、最高価格となったのは郡山市中心部の神明町。1平方メートルあたり13万5000円で、12年連続のトップとなった。
また、郡山市に近い須賀川市は若いファミリー層の受け皿となり、上昇率が0.7パーセントとなるなど、郡山都市圏に含まれる自治体を中心に地価が上昇した。

<災害で下落した住宅地も>
福島県内では、全528地点のうち135地点で地価が上昇。しかし、倍以上の274地点で下落し、全体はマイナス0.1%と5年連続の下落となった。
住宅地で福島県内最大の下落率となったのは、2023年9月に線状降水帯の被害を受けた、いわき市内郷白水町。浸水被害で売り物件が増加したことを背景に、2023年から7.5%下落した。地区に住む平塚貞男さんは「3~4軒くらい解体して、ここから出ていった人もいるし、家建てて間もないからリフォームする人もいる。引っ越してくる人、買いたい人はいないよね」と語る。

<工業地の下落 全国ワースト4位>
一方、会津若松市で顕著だったのは工業地の下落だ。市内の工業地の変動率はマイナス3.8%で県内最下位。全国でもワースト4位となった。県内のほかの工業地と比べ、主要道路から遠く利便性が低いことが考えられる。
会津若松市は「動向を注視し、引き続き立地企業への支援を継続する」とコメントしている。

<観光業の回復 商業地は上昇>
“下落”が目立つ中、2年連続で上昇となったのが商業地だ。追い風となっているのが、新型コロナの5類移行による観光業の回復だという。会津若松市内の商業地は、上昇率が0.1%となり、5年ぶりのプラスに転じた。
福島県によると、2023年一年間で県内を訪れた観光客は約5400万人。コロナ前の水準まで回復し、観光地としての賑わいが地価の上昇にも反映された形となった。
地元の関漆器店・関盛夫社長は「インバウンドで、台湾関係の人が増えています。最近、人が戻ってきたという感じはありますので、これを機会にさらに来店客数が増えればいい」と話し、客足が戻ってきていることを実感している。

<再開発で商業地が上昇 福島市>
さらに福島市では、商業地の地価が2023年より2.8%上昇した。規模縮小や計画の遅れはあるものの、JR福島駅東口で進む再開発ビルの建設が好影響を与えた。
しかし、2024年6月にリニューアルオープンした文具店は、地価の上昇に賑わいがまだ追い付いていないと感じていた。
文化堂の中野義久代表は「今回は賑わいが増えたとか、人流が増えたとかで地価の上昇に繋がった訳ではないと思う。後は賑わいを増やして、それで地価が上がったという形になれば一番良い」と話した。

<商業地の上昇が今年のポイント>
調査を行った専門家・福島県地価調査の石田英之さんは「2023年は新型コロナ5類移行になっていたが、まだ商業地の上昇幅はかなり小さかったので、2024年は大きく上昇に転じたのかなと。今年の特徴としては、商業地のプラス傾向が強まったのが挙げられる」と話し、住宅地と比べて景気の動向に敏感で回復に時間がかかる商業地の上昇が「今年のポイント」と指摘した。

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