(ブルームバーグ):ウォール街で米経済への強気な見方に執着する人々には、状況は一段と厳しくなりつつある。

債券市場や商品市場で長い間予言されていた困ったデータが今週、リスク資産トレーダーを眠りから覚まし、米株式相場は2023年の地銀危機以来最悪のパフォーマンスとなった。

8月上旬の相場急落から立ち直りつつあったトレーダーは、労働市場を中心に意気消沈するような経済ニュースが続いたことで成長不安に屈した。S&P500種株価指数は4営業日続落。信用スプレッドは8月上旬以来の速さで拡大し、半導体株指数は12%急落した。

S&P500種は今年13%上昇しており、今の相場の動揺は強気チャートのほんの一瞬の動きに過ぎず、リスクに敏感な資産は依然として経済の軟着陸をおおむね見込んでいる。しかしトレーディング、特に6日は、さまざまな資産の投資家の間で足並みがそろった珍しい例となった。つい最近までは、米経済の先行きに関する見方は19年以降で最も分かれていたとある指標では示されていた。

2年以上にわたる米金融当局のタカ派的政策からの影響で、米国株は景気敏感株に足を引っ張られ、原油や銅、債券利回りを1カ月以上悩ませてきた相場下落に同調した。

ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は「投資家はリセッション(景気後退)リスクに今、目覚めたのかもしれないが、それはスヌーズボタンを10回押した後だ。経済データとその後の決算報告の両方を考慮すると、環境は悪化の一途をたどっている」と指摘した。

 

景気の方向転換を予見する傾向があるため昔からスマートマネーと呼ばれてきた債券投資家は、利下げが早まることを織り込んでおり、米2年国債利回りは22年以来の水準に低下。商品相場全般も同様に、消費と投資のサイクルの見通しに警告を発し、2つの主要指標は大幅下落。原油価格は24年の上昇分を全て消し去り、銅は過去16週のうち13週で値下がりした。

今週の動きには明らかな前兆があった。8月初め、労働市場の弱さが示唆され、債券利回りと株式相場が急落し大荒れの展開となった。ただ、それは始まったと同時にすぐに終わった。直近の相場波乱も、前回と同じ懸念を反映している。緊急の政策措置がなければ、米経済があまりに急に機能しなくなり金融当局は救済できない恐れがあるという懸念だ。

リスク資産の足並みをそろえた急落は、特に国債で顕著だった警戒感を正当化しているとも受け止められる。さまざまな資産の動きを過去のサイクルと比較し、相場に織り込まれたリセッション確率を導き出すJPモルガン・チェースのストラテジスらのモデルをみると、4日時点では、株式と投資適格クレジットに織り込まれた確率は9%で比較的低かった。対照的に、商品市場では62%、国債市場では70%と、かなり高かった。

JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「リセッションの可能性が十分にあると想定している市場はないと思うが、データを総合すると、景気後退リスクは高まっている」と指摘。「米金融当局が9月に0.25ポイントか0.5ポイントの利下げを実施するのではないかとかなり心配されているが、リセッション入りすれば全ての市場が動く。利下げが経済に浸透するまでには時間がかかる」と述べた。

 

原題:Wall Street Traders Suddenly Converge on Economic Hazards Ahead(抜粋)

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