少子高齢化に伴う人手不足が深刻となる中、外国人労働者に頼る企業が増えています。県内でインドネシア人の雇用を進める企業は日本が選ばれなくなる未来も見据えつつ、インドネシアとの関係を深めています。
気仙沼市にある一軒家、会社の社員寮として使われています。道路の舗装や土木工事など建設業を営む会社で働くインドネシア人たちが暮らしています。現在、共同生活を送っているのは5人。いずれも20代から30代の若者です。
インドネシア人の若者
「これはインドネシア語です」
Qなんて書いてある?
「えっと…恋愛のことはあまり気にしないで若者は仕事のことを頑張って…そんな感じ」
Q実際、恋愛より仕事ですか?
「恋愛です」
世界4位の人口2.7億人を抱えるインドネシア。平均年齢は20代後半と若い世代が多い一方、競争は激しく、希望する仕事に就けない若者も多いといいます。
アスワン ディアン ヌルファイスさん(25)来日3年目
「どうして日本に来たんですかって…やっぱりお金です。例えばインドネシアで働くのはあまり難しいというか」
5人の中で最年長のサイフル シディックさん(32)は特定技能の資格で来日し、6年目を迎えました。「これが私の奥さんと子供」と写真を見せてくれました。
平均月収は日本円で2万円から3万円ほどのインドネシア。将来の夢のため、母国の家族のため…。それぞれが理由を抱えて日本に働きに来ています。
サイフル シディックさん(32)来日6年目
「子供がどんどん大きくなっておんぶもできないし、それ一番悲しいです。(日本に来たのは)理由がありますからそれはしょうがないです。子供と家族のために…」
シディックさんたちが働く気仙沼市の菅原工業は、これまで約20人のインドネシア人を雇用してきました。菅原渉社長は背景に、県内の建設会社が直面した「深刻な人手不足」があったと話します。
菅原工業 菅原 渉 社長
「やはり震災復興の工事が始まって、人は何人でも欲しかったんですよ。まず日本人は募集かけても全然来ないので、技能実習生を呼ぼうかと思いました」
人口減少が続く日本。県内でも15歳から64歳の生産年齢人口はこの先30年で毎年1万5千人のペースで減少する見込みで、働き手の確保はより一層難しくなると予測されています。こうした中、期待されているのが外国人です。県内の外国人労働者は去年10月時点で1万6586人とこの7年で2倍以上に増加しました。
県も企業を後押ししようと対策に乗り出しました。去年7月、インドネシア政府と人材受け入れに関する覚書を締結。現地で県内の企業を紹介するイベントを行い、約650人が参加しました。今年も規模を拡大し、県内の企業50社が参加するイベントを予定するなど、インドネシアとの交流は拡大しています。
宮城県 村井 嘉浩 知事(8月26日 定例会見)
「去年ちょっとしたイベントをやったが会場にあふれんばかりの若い人が集まってきた。(インドネシア人の受け入れは)地域の活性化・活力につながっていくと思います」
インドネシア人は「会社になくてはならない貴重な戦力」と話す菅原さん。彼らが働きやすいようにと、市内にイスラム教の礼拝所も作りました。
菅原工業 菅原 渉 社長
「向こうがメッカの方向を向いていて、みんなこれを敷いてお祈りする感じですかね。インドネシアの従業員がイスラム教なので1日5回お祈りするんですよ。彼らお祈りする場所、家でやっているんですけど、せめて休みの日くらいこういう場所があった方がいいかなって」
さらに、帰国後も働き続けられるよう、菅原さんはインドネシアに再生アスファルトを扱う法人を設立しました。着実に経済成長を続けるインドネシア。菅原さんは、いずれ日本が選ばれなくなるという危機感を持ちつつ、外国人にとっても働きやすい場所になるよう努力を続けるべきと考えています。
菅原工業 菅原 渉 社長
「実際インドネシアで会社やってるんですが、国の成長はすごく早いので、かと言ってすぐ来なくなることはないんですが、人数は減ってくると思う。その中で彼らに選ばれる地域であり続ければ、気仙沼とインドネシアの交流はずっと続いていくんじゃないかと思います」
宮城の産業を持続可能なものにするために、国を超えた人材確保の対策が求められています。
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