東京電力・福島第一原子力発電所で、事故後初めて予定されていた燃料デブリの取り出し作業は22日は断念。再開は未定となった。作業に立ち会った関係者は「ありえないミス」と指摘。福島県は東京電力に急遽申し入れを行い、着実な作業の実施を改めて求めた。
<8月22日に着手する計画>
福島第一原子力発電所2号機では、事故で溶けた燃料などが冷えて固まった「燃料デブリ」の試験的な取り出し作業に、事故後初めて着手する計画だった。しかし…
「予定していた順番のものと違うということに気づいたので、本日の作業はそこまでと」
東京電力によると、作業は22日午前7時24分に始まった。パイプを5本つなげて取り出しに使うロボットを投入する計画だったが、そのパイプをつなぐ順番が間違っていることが発覚。ロボットの投入に至らず、22日の着手は断念。2週間かけて3グラム以下の燃料デブリを試験的に取り出す計画だったが、その再開の時期は未定に。
<福島県が緊急の申し入れ>
2週間かけて3グラム以下の燃料デブリを、試験的に取り出す計画だったが、その再開の時期は未定に。
福島県は22日夕方、東京電力に緊急の申し入れを行い「人為的かつ初歩的なミスであり、昨今のトラブル発生状況も踏まえると、県民に大きな不安を与えかねない」と着実な作業の実施を改めて求めた。
<東電社長 安全かつ慎重に>
1号機から3号機に合わせて880トンあると推計されている燃料デブリ。
廃炉の「最難関」とされる今回の作業をめぐるトラブルについて、東京電力の小早川智明社長は「デブリの試験的取り出しは、廃炉の中でも、やはり一番非常に重要な局面だと思っています。まずは、安全かつ慎重に進めることこそが、地元の復興にも、地元の皆さんのご安心にも重要だと考えています」と話した。
<県民 どうしてそんなミスが>
これまでに3回延期され、計画の後ろ倒しが続く燃料デブリの取り出し。
福島県漁業協同組合の野崎哲会長は「デブリ取り出しは、福島の廃炉にとっては大きなマイルストーン(中間地点)になると思いますから、頑張ってほしい」と語る。
また、福島県・浜通りの住民からは「初歩的なミスを、どうしてそういうミスが出てしまうのかとか。やっぱり説明が足りていない」「2051年の廃炉はちょっと無理ではないかとは思う。いろんな問題が重なっているので。でも最後までやって貰えれば良いかなとは思う」との声が聞かれた。
<2051年の廃炉完了に影響はない>
東京電力は22日夕方の会見で「正直きょうあすというところで、51年ということに影響があるという風には、私は全く考えてはございません」と述べた。
廃炉をめぐるトラブルが相次ぐ一方、東京電力は2051年までに廃炉を完了させる方針を変えていない。
<トラブルの詳細>
ロボットは、格納容器の中に入れてから釣り竿のように下にのばしデブリに到達する計画。そのためには格納容器の手前の部分で、トンネルの中に入っているロボットを棒で前に押し出していくことになる。この押し出し用の棒・5本は順番が決まっているのだが、押し出す直前になり「きょう使う順番のものではない」と気づいたという。
試験的取り出しに関する作業は、周辺の被ばく量が高いことなどから作業員の被ばく量を考慮して一日およそ2時間と決められているため、22日はその場で着手を断念し、作業は終わったという。
<関係者 ありえないミス>
現場に立ち会った関係者は「ありえないミス」と話す。そもそも燃料デブリの試験的取り出しは、ロボットの開発遅れや堆積物の詰まりによるロボットの作り直しなどで3回延期され、当初の計画からは3年ほど遅れている。
東京電力は、作業の再開について原因を調査したうえで行うことにしていて。23日の着手はできないとしている。
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