うどんをドーナツにしたらバカ売れしたのはなぜ?58分しかないアニメ映画が、2024年上半期満足度1位になった秘密は?良いものだからといって、売れるとは限らない!ヒットの裏には“人々に見つかり、受け入れられる“ための広告戦略がありました。

大ヒットを生む3つの宣伝「トリプルメディア」

発売から約1か月で400万食を売り上げる大ヒットとなっているのが、讃岐うどん専門店『丸亀製麺』が販売する「丸亀うどーなつ」(5個入り300円)。

コシが自慢のうどんをミキサーにかけて生地に混ぜ込み、モッチモチ食感がクセになる新スイーツですが、「大ヒットの裏にはうまい宣伝があった」と話すのは、日本初の広告マーケティング専門誌、月刊『宣伝会議』の編集長、谷口優さん。

月刊『宣伝会議』谷口編集長:
「丸亀うどーなつは、一気に垂直立ち上げを狙ったというところで、まさにトリプルメディア手法がヒットにつながっている」

トリプルメディア手法とは、「ペイド」「オウンド」「アーンド」の3つの宣伝を組み合わせる戦略。

【1】ペイドメディア(Paid Media)
これはテレビのCMなど、費用を払って広告掲載するメディアのこと。不特定多数の人に知ってもらうだけでなく、興味を持った人を自社サイトに誘導する狙いもあります。

【2】そしてオウンドメディア(Owned Media)
会社がオウンド=「所有する」、自社サイトなどで商品の魅力を伝えイメージアップ。

【3】さらに大事なのが、アーンドメディア(Earned Media)
アーンドとは「獲得する」という意味で、口コミなど第三者が発信する情報を伝えるSNSやレビューなどです。

月刊『宣伝会議』谷口編集長:
「第三者が発信する情報は評判の獲得に繋がりやすいので、口コミが非常に影響力を与えるようになってきている」

「丸亀うどーなつ」も、販売開始前から期間限定の「POPUPストア」を出すなど、口コミが発生しやすい仕掛けを用意。

すると、「確かにうどんを感じるドーナツ!」「自分で味付けできるのがいい」とリアルな声がSNSで拡散され、食べたくなる人を増やしたといいます。

担当者も「テレビCMを観る層とPOPUPに足を運ぶ層が違うので、幅広い年代にアプローチできたのではないか」と話します。

「誰かに言いたくなる」仕掛けで大ヒットの映画

しかし、好評も悪評も、その口コミ次第と怖い部分も…

月刊『宣伝会議』谷口編集長:
「きっと皆さんがポジティブな口コミをしてくれるはずだと、ある意味覚悟も持ってやらないといけないところもある」

ヒットを生む、トリプルメディア戦略の中で最も難しいというのが、一般人が発信する口コミ。それを見事にコントロールし、公開から約1か月半で興行収入15億円超えの大ヒットとなっているのが、アニメ映画の『ルックバック』です。

漫画を愛する2人の少女の物語で、上映時間はたったの58分。しかし公開直後から、レビューサイトで急上昇し2024年上半期映画満足度1位を記録!
(※映画レビューサービスFilmarks〈フィルマークス〉調べ)

「アニメ映画No1かもしれない」「作画・音楽すべてが神だった」とSNSも席巻!

鑑賞した客:
「友達がSNSとかですごく感想を上げてて、観たいな観たいなと思って」

原作は人気漫画『チェーンソーマン』で知られる藤本タツキさんの読み切り漫画ですが、それを知らない人でも映画を観ると、誰かに言いたくて「口コミ」を書きたくなる!そんな仕掛けがあるといいます。

それは、伏線ー。もともと原作も「伏線がスゴイ」と話題になっていましたが、映画でもそれを忠実に再現し、さらに映画版だけのこだわりも、細かく仕込んだとのこと。

『ルックバック』押山清高監督:
「こちら側からはあまり言いたくないけど、あまりにも気付かれないとちょっと
言いたくなっちゃうかもしれない。多分発見したら言いたくなるポイントだと思うけど、映画を深読みできる隠し味のような感じで観てもらえたら」

“懐かしくて突っ込み要素満載”が流行中

そして2024年は、CM業界にある流行が来ているといいます。

月刊『宣伝会議』谷口編集長:
「最近“ノスタルジー広告”というか、みんなが昔見ていた懐かしいものを、上手く広告に取り込んだものが増えている」

例えば、ロングヒットのお菓子「ドンタコス」。2024年に発売30周年を記念してリニューアルしましたが、CMは…

ドンタコスったらドンタコス♪
ドンタコスったらドンタコス♪

懐かしい当時の映像をそのまま使い、ナレーションと商品を差し替えています。

また31年前に発売された「Jリーグカレー」も、5月に復刻版が作られ懐かしいCMが復活。少年まさお君が、カレーを食べてラモス瑠さんに変身するという当時のCMと同じ作りで、今回もラモスさんはもちろん、子役だったまさお君も父親役として出演しています。

月刊『宣伝会議』谷口編集長:
「昔見ていた人は懐かしいし、若い人たちに突っ込まれる要素もあったりするので話題化しやすいというのが、1つメリットとしてある」

さらに昔を再現するだけでなく、今は亡き昭和のスターを起用することも。
シャープ「AQUOS R9」のCMでは、スマホを手にした松田優作さんが「本当のことが言える奴、減ってない?お前だよ」と熱いメッセージ。

シャープ営業統括部 林孝之マーケティング部長:
「松田優作さん。スマートフォン、携帯のない時代に生きられた方が、
この時代に一体何て言うだろうか、ワクワクするよねということで起用させていただいた」

松田さんの顔は最先端のCGを使って制作。体は実際のモデルで撮影して合成。細かい手の動きなどは、妻の松田美由紀さんがチェックしたと言います。

さらに松田優作さんを知らない世代に向けては、渋谷駅に大規模な広告を展開。

クールなイメージとは一転し、POPなイラストで、トイレ中にスマホで通話をする松田さんまで登場!このインパクトのある看板ももちろん、妻・美由紀さん了承済みです。

飛び出す“新宿東口の猫”に新キャラ登場

一方、令和のインパクト看板といえばモニターから飛び出して見える“新宿東口の猫”。実はその猫の部屋に、なんとTHE TIME,のシマエナガちゃんが加わることに!

6月に“新宿東口の猫”の制作現場を取材した際、THE TIME,の原千晶部員が発した軽い一言…

「シマエナガちゃんっていうキャラクターで、何かできたりしないかなと…」
この一言から本当にコラボが実現。

シマエナガちゃんのぬいぐるみを3Dスキャンし、ふっさふさの毛を1本1本CGで作成。その数75万本以上!そして現場を苦労させたのが、顔の向き。

スタジオでは、上から撮られることが多いシマエナガちゃんは、少し顔が上向き。
しかし、“新宿東口の猫”が出てくるのはビルの上。下から見上げてもらうため、顔が上向きでは見えにくくなってしまうということで、体の角度や顔の向きを1か月かけて修正したのです。

そしてついに完成したコラボ作品。そこには、物を落として遊ぶ巨大猫に翻弄されるシマエナガちゃんの姿が…!

この新作は、10月1日までクロス新宿ビジョンにて、毎時30分ごろに見ることができます。

(THE TIME, 2024年8月16日放送より)

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