(ブルームバーグ):7月米小売売上高と大手小売企業の決算は、個人消費の健全性を巡る懸念を和らげるのに多いに貢献した。
しかし、ウォール街のアナリストはまだ安心しておらず、ディスカウントストアのターゲットや百貨店メーシーズ、安売り衣料品店「TJマックス」を運営するTJXの決算に対する注目度が高まっている。3社はいずれも21日に6-8月(第2四半期)決算を発表する。
ウォルマートが通期の増収率見通しを4.75%増に引き上げたり、7月の小売売上高が市場予想を上回る前月比1%増になるなど、表立った数字は力強い。一方で詳細を精査すると、消費者がそこまで元気ではない兆候も浮かび上がる。
ウォルマートの顧客は生活必需品の購入を重視し、ぜいたく品ではなく価格の安いお買い得品を求めている。同社の成長は競合他社から市場シェアを奪うことでもたらされており、クオ・バディス・キャピタルの創業者ジョン・ゾリディス氏は「あまりポジティブとは言えず、警報解除シグナルではない」と語る。
「これまで出てきた多数のデータやすべての企業のコメントを総合すると、個人消費の環境は依然として弱含みである」と同氏は指摘。「小売セクターの残りの決算発表でそれが示されるだろう」とした。
個人消費は米経済成長の最大の原動力であるだけに、小売企業の収益は重要な意味を持つ。小売セクターでは多くの企業がまだ決算を発表していないが、他の消費者向け企業のからは、新型コロナ禍後のリベンジ消費後退を背景とした暗い見通しが相次いで出されている。
外食大手マクドナルドの4-6月(第2四半期)決算は来店客数の減少が響き、2020年以来の減収となった。菓子メーカーのハーシーと食品大手クラフト・ハインツは売上高見通しを下方修正した。民泊仲介のエアビーアンドビーとオンライン旅行会社エクスペディア・グループの業績見通しからは、消費者が旅行予約時に選別色を強めている様子が読み取れる。
こうした環境の中、ランズバーグ・ベネット・プライベート・ウェルス・マネジメントのマイケル・ランズバーグ最高投資責任者(CIO)は、各社の収益だけでなく、それぞれの企業が事業環境の変化にどう対応しているかを注視している。例えば、マクドナルドは売上不振を打開するために5ドルのバリューセットを導入した。
ウォルマートも個人消費の実情を測るバロメーターだと同氏は指摘。「常に低価格をアピールしてきたウォルマートが多くの商品を値下げした。これは、消費者の動きが鈍りつつあることを米企業が見抜いていることを示唆する」と語った。
ターゲット、メイシーズ、TJXの決算に続き、投資家の視線は家電量販店ベスト・バイや小売チェーンのダラー・ゼネラルがそれぞれ月内に発表する決算にも注がれるだろう。ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で23日にパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が行う講演も、金利が消費者に与える影響を探る手掛かりとして注目材料となる。
インフレ鈍化も個人消費に影響を与える重要な要因だ。7月の米消費者物価指数(CPI)では、食品とエネルギーを除いたコア指数の前年同月比の伸びが4カ月連続で鈍化した。
ステート・ストリートのストラテジスト、ケイラ・セダー氏は「あらゆることを考慮すると、最近のデータが示唆するのは、消費が強さを維持しつつも減速していることだ。これは、米金融当局が緩やかな利下げを始める準備ができている状況と整合する」とした。
多くの小売銘柄にとって見通しは総じて暗い。DAデビットソンのアナリスト、マイケル・ベイカー氏はターゲットやは化粧品小売アルタ・ビューティを含む数社の第2四半期および下期の業績予想を下方修正した。小売企業は今年後半のガイダンスを引き上げるよりも、引き下げる可能性の方が高いと同氏はみている。
原題:Wall Street Wants More Signs US Consumers Are Still Spending(抜粋)
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