岸田首相は「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたことなどを受けて、9日から予定していたカザフスタンなど中央アジアへの訪問を急きょ中止しました。

 しかし、日本では中央アジアからレアメタルを安定的に確保することを目指し連携強化を急いでいます。

 カザフスタンでは北海道大学大学院の川村洋平教授らが2025年度からレアメタルなどが採掘される鉱山開発の支援を始めます。近年現地で問題になっている公害を防ぐとともに、日本の資源政策を後押ししたい考えです。

ドローンやセンサーでビッグデータを収集

 レアメタルは、スマホやAI、電気自動車に搭載される半導体や再生可能エネルギーを充電する蓄電池に使われ、各国の経済成長のカギを握るともいわれています。

 カザフスタンなどの中央アジアは埋蔵量が豊富とみられていて注目されていますが、鉱山開発の廃水に含まれる重金属による公害や環境汚染が深刻化しています。

 環境に配慮した採掘技術は世界でもまだ確立されていないため、鉱山工学が専門の川村教授らが先端技術を駆使して技術の確立を目指しています。

 川村教授らが開発を進める新技術は、ドローンを使って鉱山周辺の地形を把握したり、様々な地点に設置したセンサーで水量や水質データなどを集めます。

 それらのデータを高速無線通信や人工衛星でリアルタイムで集めビックデータにしてバーチャル空間に鉱山を再現します。

 その後、AIを用いてバーチャルで地下水脈のありかなどを予測し、重金属が地下水と混ざり合って出る廃水を出さないように実際の掘削位置や方法などを決めるということです。

鉱山による公害を二度と起こさないために

 川村教授は8月6日からカザフスタンを訪れていて、8日から東部の鉱山の現地調査を行っています。

 この鉱山では2025年度から新たな鉱脈の開発が本格化し主に金が採掘される予定で、川村教授らが新技術を使って支援していきます。

 日本では足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病などの鉱山開発による公害が起きています。

 川村教授は「現在でも国内の鉱山から出る廃水対策として、年間400億円が投入されている。同様の公害が発展途上国でも起きないよう技術開発を進めたい」と力説。「国内や北海道でも近年になり再び鉱山開発の動きがあるので、そこでも使える技術を開発したい」と話しています。

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