(ブルームバーグ):米エヌビディアの時価総額は最高値をつけた6月以降に9000億ドル(約132兆4000億円)が吹き飛んだ。額面通りに受け止めるなら、エヌビディア株の快走を支えてきた人工知能(AI)投資ブームが冷え込んでいる兆候にも見えるが、実のところそれほど悲惨な状況ではない。
合わせてエヌビディアの売上高の40%余りを占めるマイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ・プラットフォームズの4社はいずれも、AIインフラに数十億ドルの投資を継続する方針を示している。一方、AIに使用されるデータセンター・サーバーを手がけるスーパー・マイクロ・コンピューターは2025年6月通期の売上高について、市場予想を大幅に上回る最大300億ドルを見込むと明らかにした。にもかかわらず、AI投資の最大の受益者であるエヌビディアの株価は、わずか2カ月足らずで27%下落した。
ウェイブ・キャピタル・マネジメントのチーフストラテジスト、リース・ウィリアムズ氏は「誰もAI投資を減らす、あるいは一時停止するなどとは言っていない」と指摘。「ただ、非常に神経質なムードになっている」と述べた。
市場ではすでに数週間前から、割高なテクノロジー株から資金を引き揚げ、小型株やバリュー株などにシフトする動きが出ていた。そこに2日発表の7月雇用統計が下振れし、米景気が想定以上に減速しているとの懸念がさらに強まった。
こうした不透明なマクロ経済情勢は、エヌビディアや同業他社にとって、四半期決算よりも大きな不安材料となり、株価の足かせとなっている可能性があると、とウィリアムズ氏は述べている。最近のボラティリティー上昇の引き金となったとされる世界的なキャリートレードの巻き戻しもさらに株価を下押しした。
同時に、ハイテク大手は今回の決算発表で、AI投資が収益拡大につながっていると投資家を納得させられなかった。レイモンド・ジェームズのマネジングディレクター兼シニア分析アナリスト、スリニ・パジュリ氏は「AIを収益化する方法をまだ見つけていない。そのため、投資リターンは不透明だ」と指摘。「問題はこの状態がいつまで続くかだ」と話す。
パジュリ氏によれば、8月下旬のエヌビディア決算発表まで大きな材料が乏しい中で、AIチップメーカーに関するセンチメントが向こう数週間に変わる可能性は低い。
エヌビディアが輝きを失うのは時間の問題だったのかもしれない。6月中旬時点の予想株価収益率(PER)は約44倍で、同時期のナスダック100指数の約26倍と比べてかなり割高だった。足元の株価急落で予想PERは約30倍まで下がっており、長期投資家にとっては再び妙味を増すかもしれない。
マホニー・アセット・マネジメントのケン・マホニー社長兼最高経営責任者(CEO)は「これらの企業に関して、少し先走っていたという点以外、根本的には何も変わっていない」と語った。
原題:Nvidia Has Lost $900 Billion Even as AI Spending Plans Ramp Up(抜粋)
--取材協力:Ryan Vlastelica、Subrat Patnaik.
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