日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS 2024 KYOTO & IVS Crypto KYOTO」が、今年も4日(木)から6日(土)まで、京都府・京都パルスプラザで開催され、3日間で延べ1万2000人が来場しました。

 最終日に行われた、ブロックチェーンの持続可能なマスアダプション(大衆への浸透)に向けた日本政府の取り組みを語るトークセッションでは、金融庁イノベーション推進室・伴ちひろさん(写真・左)をモデレーターに迎え、金融庁総合政策局イノベーション推進室室長兼チーフフィンテックオフィサー・牛田遼介さん(写真・中央)、デジタル庁Web3.0業務エキスパート・松澤翔太さん(写真・右)が登壇し、各省庁の体制や役割について議論しました。

 牛田さんは5日まで、世界の金融エコシステムや金融システムの未来などを考える会合「Point Zero Forum」(スイス・チューリッヒ)に参加していました。多くの課題を持つ既存の金融業界において、「ステーブルコインは金融機関がブロックチェーンを使うきっかけのひとつになる」という議論が会合で交わされていたということです。

(金融庁総合政策局イノベーション推進室室長 牛田遼介さん)
「金融庁のイノベーション推進室では、Fintech(金融×テクノロジー)という大きな枠組みの中で、ブロックチェーン領域も扱っている。既存の金融業界における課題として、例えば日米で外国為替取引を行う場合、時差の関係でリアルタイムな取引をできるのは6時間ぐらいに限られてしまう。このような流動性の分断を、ブロックチェーンの活用で解決できないかなどの検討をしている」

 新しい技術を推進する一方で、利用者保護や金融犯罪を防止するために規制の必要性も説明し、最先端なテクノロジーを正しく活用するためには「イノベーションとリスクの低減を両立させる」ことが肝になるとしました。

 こうしたなか、デジタル庁と金融庁では「相談窓口」を開設していて、事業者や自治体からの質問を受付けていると言います。

(デジタル庁Web3.0業務エキスパート 松澤翔太さん)
「相談内容によって各省庁に連携を取っているが、デジタル庁所管の業務があるわけではないので、事業者と一緒に考え、悩みながら相談に乗るようにしている。例えば、マイナンバーカードやマイナポータルといった国民サービスに、VC(Verifiable Credential、資格や能力、経歴などの証明書をデジタル化したもの)を連携させ、より良い国民サービスを届けていくという提案を以前いただいた。この提案に対して、イエスかノーで答えるのではなく、どのようにしたら実現できるのかを事業者と共に考えていくスタンスを取っている」

(金融庁総合政策局イノベーション推進室室長 牛田遼介さん)
「ブロックチェーン全体に関してはデジタル庁、暗号資産に関しては金融庁が取りまとめている。また、金融庁にもフィンテックサポートデスクという窓口があり、何か相談があれば、両者をうまく活用いただくのがいい」

 最後に、政府として今後のさらなるブロックチェーンを活用したビジネスの普及に向けた姿勢について言及しました。

(金融庁総合政策局イノベーション推進室室長 牛田遼介さん)
「ブロックチェーンを活用したビジネスは、オープンイノベーションの可能性が極めて大きいと考えている。特に金融庁は他の省庁にはないくらい、多くの事業者とディスカッションを重ねている。それを繰り返すことで、マスアダプションのヒントが少しずつ見えてくるのではと思っている」

(デジタル庁Web3.0業務エキスパート 松澤翔太さん)
「政府全体としても、ブロックチェーンの普及に前向きに取り組んでいく大きな流れのなかで、民間企業と行政といろんな対話を続けていく。さらに今年からは、マイナンバーカードのスマホ搭載が可能になることで、新たな事業アイデアもどんどん出てくるだろう」

 政府がWeb3を日本の成長戦略に位置付けてから2年が経ちます。ブロックチェーンの普及に向けた取り組みは、少しずつ広がっています。

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