SNSマッチングアプリなどを通じて接触し、実際に会うことなく恋愛感情や親近感を抱かせて、現金などをだまし取る「ロマンス詐欺」。警察庁は、今年1月から5月までの発生件数が1148件、被害額は合わせて約118億円にのぼると発表。昨年同時期に比べて、件数も額も2倍近くとなった。近年の拡大を受け、警察庁も専門の捜査班を発足させ、摘発に力を入れている。
【映像】相手が徐々に“好意”を出してきた実際のLINE
これらの犯罪グループの特徴は、外国人を名乗ることが多く、海外に拠点があるケースもある。国際ロマンス詐欺の手口や実態とはどういうものなのか。被害はどうすれば防げるのか。『ABEMA Prime』で被害者とともに考えた。
■被害総額1300万円超 当事者女性「麻痺してくる」
2年前に被害にあったカナコさん(仮名・48)。2022年4月30日、マッチングアプリで知り合った「韓国にルーツがある」と名乗る男とLINEのやりとりを始め、2人の将来の話から投資話につながった。5月19日、紹介されたサイトに5万円を入金すると、すぐに6万円になって手元へ。しかしその後、入金を繰り返すも、振り込みはなくなる。5月25日、被害に気付き、返還を求めるも拒否された。被害総額は1300万円以上で、警察に被害届を提出したものの、現在まで捜査に進展はない。
カナコさんは「段々と麻痺してきた」と、当時を振り返る。「お金を返してほしい思いに加えて、『いつまでに払わないといけない』と期限を定められると、金額がただの数字にしか見えてこなくなった。本当におかしいと思ったのは、最後に振り込んだ5月末ごろ」。
LINEのやりとりは、最初はラーメンの話題といった日常的なものだった。そこから「写真を見ると32歳だと思います。笑顔がきれいだ」といったことを言ってきたり、「(アプリで)会ったのは運命」「大好き」「彼女になってくれたらきっと幸せ」など、徐々に好意を見せるようになった。
優しい言葉をもらううちに、「最初はまったく好意がなかったが、信頼していった」。そもそも外国人との交際願望はなかったが、「いいねを返したのも軽い気持ちだったが、話をしていくうちに、私自身の気持ちは動いていった」。
投資話を持ちかけられた際、カナコさんは警戒心から「会った時に詳しく教えてください」と伝えた。しかし、相手は「携帯電話で30分操作すればできる」と説明し、「会った時、私たちはもっと意味のあることをすることができる」と主張した。
こうしたやりとりを通して、「簡単にできるのなら」といった気持ちになっていく。「物理的な距離があったが、6月に会う約束をしていた。投資話が出てきたらやめたほうがいいと頭にあったが……」。また、経済的な不安をあおられこともあるという。「世界情勢が悪くなる中で、お金があったほうがいい。シングルマザーの不安もあおってきた。投資するか悩んでいた時、運転免許証の写真が送られてきたことも信じる一因になった」。
こうしたやりとりに、ギャルタレントのあおちゃんぺは「キャバクラの営業LINEのようだ」と評する。「周囲に友人がいない人や、相談できない人をねらうのは、水商売のやり方に似ている。孤立した人はだましやすい。会ったことがなくても好きになる気持ちは理解できる。アイドルや芸能人に恋愛感情を抱く人も、会ったことがないのに『結婚できるかも』と推す」。
■被害に気付くポイント、相談した際の“二次被害”にも注意?
ロマンス詐欺被害者からの相談も数多く受けている、太平洋法律事務所の国府泰道弁護士は、「会っていなくても、LINEのやりとりを重ねるうちに、気持ちがひかれていく。『この人と結婚できれば』と引っかかる人が多く、恋愛感情がなかった人の被害は少ない。男性被害者も1件だけ見たが、その人も恋愛感情で、フィリピン人との交際を期待して引っかかった」と解説する。
被害に気付くポイントとして、大前提は「投資の話が出たら要注意」だということ。典型的なパターンとしては、初期に少額のリターンがあり、信頼させて高額だまし取る手口がある。また、返金が遅れている言い訳として、日本にはない税制の話が出るのも特徴だ。「先に税金を払わないと引き出せない」などと言って、さらに振り込むよう促す。
国府氏は「ロマンスは、投資話への入口でしかない」と指摘する。「うまく投資話に持ち込んだ後は、巧妙に乗せられていく。カナコさんの場合も、わずかな投資で利益が返ってきた。これを繰り返すと信用が増す。有名人になりすましたSNS型投資詐欺とも共通している」。
一度被害にあってしまえば、「ほとんどお金は取り戻せない」のが現状だ。「『振り込め詐欺救済法』によって、銀行口座を凍結する方法もあるが、ほとんど口座にお金が残っていないことが多い」。
また、二次被害にも注意が必要だ。ネットでは「カネを取り戻せる」「専門」「高回収率」などと語る弁護士も多数存在するが、実際には取り戻せず、高額な着手金を支払わされる二次被害につながるという。ネット広告ではなく、弁護士会などを通して相談するよう、国府氏は呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)
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