ホワイトハウスで対中制裁関税について演説するバイデン米大統領=2024年5月14日、ロイター

 バイデン米大統領は14日、電気自動車(EV)などを対象に対中制裁関税を引き上げる措置に署名した。ホワイトハウスで開いた署名式でバイデン氏は「EVの未来は労働組合員によって米国で築き上げられると確信している」と述べ、安価な中国製EVの米市場への流入を防ぎ、米国の自動車産業と労働者を保護する考えを鮮明にした。

 バイデン氏は「EVに100%の関税を課す。中国が米市場になだれ込み、米国の自動車メーカーが公正な競争をできなくなるからだ」と強調。「中国の不公正な貿易慣行に支配されないEVのサプライチェーン(供給網)が求められている」と述べ、中国が高い市場占有率(シェア)を握る車載用電池や電池生産に不可欠な重要鉱物の関税引き上げの意義を訴えた。

 11月の大統領選で対決が確実視されているトランプ前大統領にも触れ、「再選されれば、すべての国からの輸入品に全面的に関税を課そうとしている。そうなれば家庭のコストが上昇することを彼は理解していない」と批判。物価上昇(インフレ)の加速を懸念し、関税引き上げの対象をクリーンエネルギーなどに限定した自らの戦略との違いを際立たせた。

 バイデン政権は14日、EVなど180億ドル(約2兆8000億円)相当の中国からの輸入品に対する制裁関税を引き上げると決定。EVの制裁関税は現行の25%から年内に100%へ上昇する。

 中国製EVは現時点で米国内にほとんど流通していない。だが、中国メーカーは大量生産による低価格化で世界中で輸出を伸ばしており、米市場への流入を未然に防ぐ狙いがある。【ワシントン大久保渉】

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