イスラエル軍は、“対テロ作戦”として、ガザ地区南部・ラファにある検問所を掌握しました。
イスラエルの地上軍が入ってくる前から、ラファでは、ミサイルや爆弾が落とされる日々が続いています。連日、数十人単位の死者が出る状況は変わっていません。
イスラエル軍が掌握した検問所は、ガザ地区に支援物資を運び込むメインゲートの役割を担ってきました。しかし、物資の搬入は止まり、エジプト側では、車両が行き場をなくしています。
イスラエル軍が各地へ地上侵攻を行うたびに、住民は、ラファへの避難を強いられてきました。人口28万人の都市に、いまや120万人が身を寄せています。衛生環境は劣悪で、トイレは850人に1つ、シャワーは3500人に1つしかありません。そこに加えて、物資が運ばれてこないという事態です。
ラファに避難の人:「2〜3日分の物資はいいとして、その後はどうすれば。検問所封鎖は“死”を意味します」
ラファに避難の人:「どこに行っても追いかけられている。この前に言われたのは『ラファへ行け、人道支援がある』。イスラエル軍はラファに入った。もう避難には疲れた」
2日前、ハマスが休戦案を受け入れるとの一報が伝えられると、喜びに沸いたラファの人々。しかし、希望は打ち砕かれました。イスラエル軍は、検問所の掌握後もラファで作戦を展開中としています。
イスラエル・ネタニヤフ首相:「本日の検問所の掌握は、重要な段階であり、ラファにおけるテロリストの4大隊の壊滅を含め、ハマスの軍事力と統治力の破壊に必要なものでした」
ラファへの地上侵攻には反対してきたアメリカ。
アメリカ・カービー大統領補佐官:「イスラエル側から聞いているのは、昨夜の作戦が、ハマス向けの武器・資金の流入を断つ“限定的な作戦”ということ。ラファに関する見解は変わりません。大規模な地上作戦は望みません」
◆ハマスは6日、休戦案の受け入れを表明しましたが、イスラエルはこの休戦案に反発しています。なぜ、このような事態になったのでしょうか。中東情勢に詳しい東京大学・鈴木啓之特任准教授に聞きました。
鈴木淳教授は「ハマスが今回、受け入れを表明した休戦案は、イスラエル側が提案したものを下敷きにしている。しかし、ある言葉をめぐって対立している」としています。
休戦案は、3段階構成になっています。
第1段階
双方 :42日間の戦闘休止
ハマス:女性・子どもなど、人質33人を解放する
イスラエル:人質1人につき、収監しているパレスチナ人30人釈放していく
第2段階
双方:ガザ地区の“持続可能な平穏”を取り戻す
ハマス:兵士を含む男性の人質解放していく
イスラエル:ガザ地区からの完全撤退をする
第3段階
双方:国連などの監視下でガザ復興開始する
イスラエル:ガザ地区の完全包囲を解除する
鈴木准教授は「第2段階の“持続可能な平穏”この言葉の捉え方が、イスラエル側とハマス側で食い違っている。ハマス側は“持続可能な平穏”=“恒久的な停戦”と捉える。イスラエルにそのつもりはないため、受け入れられないのではないか」とみています。
なぜ、イスラエルは、そこまでラファ制圧にこだわるのでしょうか。
鈴木准教授は「イスラエルは、ラファがハマス最後の拠点で、残りの人質もそこにいるとみている。ネタニヤフ政権にとって、ラファ制圧は、ガザ攻撃の“総仕上げ”。14日のイスラエルの建国記念日に向け、“戦果”を示す必要がある。それが、人質解放とラファ制圧。さらに、政権内部にラファ侵攻を強く押す右派の声があり、政権維持のためにネタニヤフ首相はその声を無視できない」としています。
今後のポイントについて、鈴木准教授は「アメリカは、弾薬や爆弾の輸送を停止するなど、ラファ侵攻を大規模に行わないよう圧力を強めている。そのなかで、イスラエルがどこまでラファ侵攻を進めるのか注視したい」としています。
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