ヒズボラの旗を振る支持者たち=レバノンの首都ベイルートで2024年4月8日、ロイター

 イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエルに対する攻勢を強めている。12日夜にはイスラエル北部に対して約40発のロケット弾攻撃を実施した。シリアのイラン大使館空爆に対する報復としてヒズボラなどの親イラン武装組織がイスラエルに一斉攻撃をかける可能性も報じられており、イスラエルは警戒を続けている。

 イスラエル軍によると、ヒズボラが12日に発射したロケット弾はほとんどを迎撃したため、けが人は出なかった。これに先立ち、爆発物を積んだ無人機2機も飛来したが、迎撃に成功したという。

テレビ演説するヒズボラの指導者ナスララ師=レバノンの首都ベイルートで2024年4月8日、ロイター

 イランは1日に起きたイラン大使館への空爆はイスラエルが実行したと非難し、報復を宣言。ヒズボラの指導者ナスララ師も8日、「イスラエルはあからさまに宣戦布告した」と語っていた。

 イランの報復を巡っては、米CBSテレビは12日、米政府関係者の話として、早ければ同日中にイランや親イラン武装組織が100機以上の無人機やミサイル数十発を用いてイスラエル領内の軍事施設を攻撃する可能性があると報道。12日に攻撃はなかったものの、イランによる攻撃が近いとする報道が相次いでいる。

 バイデン米大統領は12日、イランの報復攻撃について、「すぐにでもあり得る」との見方を示した。ワシントンで記者団の質問に答えた。バイデン氏はイラン対して「(報復を)やめろ」と警告したうえで、「米国はイスラエルの自衛を支援する。イランは成功しない」とも述べた。

 イスラエル軍などによると、ガラント国防相とハレビ参謀総長は12日、イスラエルを訪問した米中央軍のクリラ司令官とイランへの対応について協議。軍のハガリ報道官は同日、「これから数日間は警戒と準備が必要だ」と語った。

 ロイター通信などによると、自国民に対してイスラエルやイランへの渡航を見合わせるよう勧告する国も相次いでおり、事態は緊迫度を増している。日本もイスラエル国内やイスラエルの関連施設付近では注意を払うよう呼びかけている。ただ、イランとしても紛争拡大のリスクは大きく、抑制的な報復を検討している可能性もある。【カイロ金子淳、ワシントン松井聡】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。