ペルーの首都リマで開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席している石破茂首相は15日(日本時間16日)、中国の習近平国家主席と約35分会談した。主張の違いがあっても共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進と「建設的かつ安定的な関係」を構築する方針を確認した。
日本の首相が、習氏と会談するのは2023年11月以来1年ぶり。石破氏の首相就任後は初めて。
会談冒頭、習氏は「戦略的互恵関係を包括的に推進し、新時代の要求に合致する建設的かつ安定した中日関係の構築に取り組んでいきたい」と述べた。中国国営中央テレビによると、習氏は「中日関係は改善と発展の重要な時期にある」とも強調した。
これに対して、石破氏は「日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄に共に重要な責任を有している。両国の間には発展に向けた大きな可能性が広がっていると同時に、多くの課題や懸案が存在している」と表明。そのうえで「両国が戦略的互恵関係の包括的な推進と建設的かつ安定的な関係の構築に大きな方向性を共有することは、国際社会にとっても意義あるものだ」と強調した。
また石破氏は首脳を含むあらゆるレベル、幅広い分野での意思疎通をさらに強化していく意向も表明。「大局を見据えながら、習主席と共に日中関係をどのように発展させるか議論していきたい」と呼びかけた。
会談では、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡る日本産水産物の輸入再開について、今後着実に実施していくことを両首脳が確認したが、習氏は具体的な再開時期を明示しなかった。
中国・深圳での日本人男児刺殺事件を受けた在留邦人の安全確保については、習氏が「中国において日本人を含む全ての外国人の安全を確保する」と述べた。
首相は沖縄・尖閣諸島を含む東シナ海情勢や中国軍の活動活発化について「極めて憂慮している」と伝達。その上で、見解の違いを踏まえつつ、今後も首脳会談を重ねていくことを確認した。
首相は会談後、記者団に対し、「大局的な観点から意見交換ができた。非常にかみあった意見交換だったというのが私の印象だ」と述べ、「首脳間を含むあらゆるレベルで頻繁に意思疎通や往来を図り、課題と懸案を減らしていく」と強調した。【リマ村尾哲、北京・岡崎英遠】
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