ミャンマーの軍事政権は1日、総選挙実施の前提となる国勢調査を始めた。有権者名簿の作成が目的で、2025年中の選挙実施を目指している。ただ、21年のクーデターで全権を握った国軍と、抵抗する民主派や少数民族の武装勢力との戦闘は激化しており、調査を全国的に実施するのは難しい情勢だ。
調査は事前に講習を受けた公務員や教師らが調査員となって戸別訪問し、宗教や使用言語、所有不動産などに関して質問する。
国軍はアウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟(NLD)」が圧勝した20年の総選挙に不正があったと訴え、自らの統治を正当化してきた。このためクーデター以来、有権者名簿に基づく選挙を約束してきた。しかし、軍政は治安悪化を理由に非常事態宣言を繰り返し、実施を先送りしてきた。この間に武力衝突は激化し、避難民は300万人を超えた。
国境を接する周辺国への影響も大きく、軍政が関係を重視する中国も情勢の安定化と早期の選挙実施を求めているとされる。
国勢調査やその後の選挙を確実に行いたい国軍は9月末、抵抗勢力側に選挙への参加や政治的解決に応じるよう呼びかけた。背景には戦闘で劣勢に追い込まれていることや、自然災害による甚大な被害で市民生活がさらに逼迫(ひっぱく)している状況があるとみられる。
一方、抵抗勢力側は呼びかけに批判的だ。独立系メディアによると、少数民族武装勢力の幹部らは「日々爆撃により市民を虐げている国軍こそ武装解除すべきだ」「国際社会を欺くための策略だ」と非難。民主派の「国民統一政府(NUG)」も選挙の正当性を否定する。【バンコク武内彩】
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