米司法省の庁舎=2024年2月14日、秋山信一撮影

 11月の米大統領選で返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領の陣営からハッキングで非公開情報を盗んだとして、米連邦大陪審はイラン最高指導者直轄の革命防衛隊に雇われた実行役のイラン人3人を通信詐欺などの罪で首都ワシントンの連邦地裁に起訴した。米司法省が27日発表した。米捜査当局は、選挙関係以外にも、イラン側が中央情報局(CIA)元高官らのメールアカウントのハッキングに成功していたことを明らかにした。

 3人はイランにいる可能性があり、米国務省は3人の拘束につながる情報に最高1000万ドル(約14億2000万円)の報奨金を支払うと発表した。

 起訴状によると、3人は2020年1月ごろから、米国の政府当局者、元当局者、メディア、非政府機関などを標的に広範囲なハッキングを仕掛けていた。メールアカウントを乗っ取られた被害者には、元駐イスラエル大使、国務省で中東政策を担当していた元高官、CIAの元高官、シンクタンクの中東専門の研究員らが含まれていた。

 24年5月ごろには、3人はトランプ陣営の関係者のメールアカウントに不正アクセスし、非公開情報や文書などを盗んだ。6月には、盗んだ情報を民主党のバイデン大統領の陣営関係者やメディアにリークしようとした。

 6月のトランプ、バイデン両氏の討論会直前に、バイデン陣営関係者に送ったとみられるメールの文面には「トランプのことが嫌いだ。今夜の討論会に向けたトランプの最終準備の状況を送る。今夜負けたら、民主党は候補を交代させないといけないだろう」などと記していた。

 米当局は、一連の犯行が米国の選挙プロセスの信頼性を低下させ、米国内の対立をかき立て、違法に情報を収集するイラン政府主導の工作だったとみている。

 イランは、革命防衛隊の精鋭コッズ部隊のソレイマニ司令官がトランプ前政権時代の20年に米軍に暗殺されたことの報復も引き続き狙っているとされる。標的にはトランプ氏も含まれている。【ワシントン秋山信一】

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