ロシアのプーチン大統領に忠誠を誓うカディロフ首長が治めるチェチェン共和国で、テンポが速すぎたり遅すぎたりする音楽が禁止となった。その狙いとは?
■音楽を「BPM」で制限
今月、ロシア南部のチェチェン共和国は“ある驚きの決定”を発表した。
チェチェン共和国 ダダエフ文化相 この記事の写真 チェチェン共和国 ダダエフ文化相(チェチェン共和国文化省テレグラムから)「今後、すべての音楽、声楽、振り付け作品はBPM80〜116のテンポに従わなければならない」
BPMとは、どういうものなのか?番組は、音楽教室を訪ねた。
TOKYO麻布ミュージックセンター理事 麻布十番教室長 松井やすよさん TOKYO麻布ミュージックセンター理事 麻布十番教室長 松井やすよさん「(Q.BPMとは何でしょうか?)BPMは、1分間に何回たたくかということです。これが60回だとBPM60、80回だとBPM80。この4分音符の拍子の中で60。1分間で60だとBPM60が通常になっています」
BPM80〜116とはどのようなテンポの音楽なのか。実際に演奏してもらった。
実際に演奏してもらった 松井さん「(Q.BPM80からお願いしてもいいですか?)はい、80で皆さんがよく聴くご存じの曲をやってみたいと思います」
続いて、指定範囲を少し上回ったBPM120では…。
松井さん「とても速くなります」 BPM120は乳児の脈拍数、BPM80は成人の脈拍数に相当
松井さんいわく、このBPM120という拍は乳児の脈拍数、BPM80は成人の脈拍数に相当するという。
BPM80〜116は納得のいく心地良いテンポ 松井さん「初めてお子さんに与える音楽の教育としては、80〜116は納得のいく心地良いテンポです」
人や国、文化やジャンルによっても変わってくるBPMは、聞く人の心地良さにもつながってくる要素であるという。
近年ではBPMの速い曲がヒットするが…近年ではBPMの速い曲がヒットする傾向にあり、様々な楽曲がリリースされている。そんななかチェチェン共和国は、そのBPMを制限するというのだ。
さらに、文化相が「すべての音楽」を対象にしたことで、アメリカメディアなどは有名アーティストの多くの楽曲が禁止されることになると報じている。
テイラー・スイフトの「クルーエル・サマー」はBPM170。他にもビヨンセなど有名アーティストの一部の楽曲が聴けなくなるという。
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■規制の目的は?“大きな問題”も…■規制の目的は?“大きな問題”も…
チェチェン共和国の新たな規制の狙いについてみていく。
規制の狙いについて文化相は…ガーディアン紙によると、チェチェン共和国のダダエフ文化相は、音楽を「チェチェンの精神性とリズム感に適合させる」ことが目的で、これらを「国民と子どもたちの未来に伝えなければならない」と語ったという。
一方で、ロシアの独立系メディア・メドゥーザによると、80〜116BPMという速度には、ポップやテクノなどほとんどの音楽が収まらないという。
実際、BBCによると、2020年にヒットした曲の平均は122BPMだったという。そのため、ガーディアン紙は欧米諸国の影響を排除する狙いだと指摘している。
ただメドゥーザによると、これには大きな問題があるという。それは、ロシアの国歌は76BPMで、規制対象になってしまっているのだ。
規制の対象「すべてのチェチェンの伝統音楽に限る」こうした報道に対して、チェチェン共和国のカディロフ首長は自身のSNSで「知力に限界がある反体制派ジャーナリストのために説明しよう」としたうえで、「あくまで規制の対象は、すべてのチェチェンの伝統音楽に限る」との見解を示した。
つまり、海外の音楽を規制するわけではないということだ。
ただ、モスクワ・タイムズによると、チェチェン共和国の伝統音楽でも、規制対象になるものは6月1日までに書き直すよう命じられたといい、自国の音楽から欧米のテンポを排除しようという思惑も見てとれる。
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