フランスの新首相選出が大詰めを迎えている。マクロン大統領は23日から、各政党グループの代表者をエリゼ宮(大統領府)に招いて会談し、その結果を踏まえて首相を指名する。指名は8月末から9月初めにずれ込む可能性もある。
6~7月の国民議会(下院)選では、社会党、共産党、急進左派「不服従のフランス」(LFI)などで構成する左派連合「新人民戦線」が182議席、中道の与党連合が168議席、極右政党の国民連合が143議席を獲得したが、いずれも過半数に達しなかった。
フランスでは首相の指名権は大統領が持つ。大統領は議会の不信任案で政治が停滞するのを防ぐため、最大グループから首相を指名するのが慣例だ。だがマクロン氏はLFIの政権入りに難色を示しており、与党連合を中心にLFIを除く左派連合の一部と中道右派・共和党を加えた政党連合から首相を指名するシナリオが浮上している。
左派連合内ではLFIと、社会党など他党との対立が深まっている。LFIを率いるメランション氏ら幹部は8月18日付の「トリビューヌ・ディマンシュ」紙に掲載された論説で、マクロン氏が左派連合の首相候補でパリ市幹部職員のリュシー・カステ氏(37)を首相に指名しなかった場合、国民議会選の結果を尊重しない権力の乱用に該当するなどとして、憲法に基づく大統領弾劾の手続きに入ると主張した。
これに対し、社会党のカネール上院議員団長は「不適切な挑発行為だ。火薬のないミサイルを撃ち込むようなもので、左派連合とカステ氏の立場を弱める」と批判。共産党のトップ、ルーセル国家書記も「大統領の弾劾ではなく、(左派連合の)組織内の危機を起こさないことを優先すべきだ」と反発した。弾劾には国民議会と上院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要となるなどハードルが高く、実現は困難とみられている。
一方、国民連合のルペン前党首、バルデラ党首もエリゼ宮でマクロン氏と会談する。だが、国民連合は他党との協力が進んでおらず、バルデラ氏が首相に指名される可能性は低いとみられる。
仏メディアでは新首相候補として左派連合のカステ氏のほか、オランド前社会党政権で首相を務め、現在は同党を離党したベルナール・カズヌーブ氏(61)、共和党の元予算相で知日派としても知られるイルドフランス地域圏議会のバレリー・ペクレス議長(57)、元労働相でオードフランス地域圏議会のグザビエ・ベルトラン議長(59)らの名前が挙がっている。
国民議会は9月中旬までに2025年度予算案をまとめる必要があるため、首相は9月第1週ごろまでに指名されるとみられている。【ブリュッセル宮川裕章】
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