米中西部カンザス州マリオンで、警察が週刊紙の発行元に家宅捜索を行うなどして報道に圧力をかけていた疑いが浮上し、批判を受けている。元マリオン警察トップのギデオン・コーディ容疑者が司法手続きを妨害した罪で地元検察に訴追される事態に発展した。
マリオンは人口2000人に満たない小さな街。きっかけは地元の実業家女性と、1870年創刊の週刊紙「マリオン・カウンティー・レコード」のトラブルだった。
レコード紙は昨年8月、女性が主催した地元選出の下院議員(共和党)との交流会を記者が取材しようとした際、女性の依頼を受けたコーディ容疑者から追い出されたと報じた。さらにレコード紙は1週間後、女性が過去に飲酒運転をしていたなどとの記事も掲載した。
これに対して女性はレコード紙が飲酒運転の情報を不正に得たと主張。コーディ容疑者はレコード紙記者が女性になりすまして情報を取得した疑いがあるとして、裁判所から令状を得た上で、レコード紙の事務所や発行人の自宅を捜索し、パソコンなどを押収した。
この捜索を巡っては、カンザス州の特別検察官が調査を行い、「警察の捜査は不十分だった」と指摘。コーディ容疑者が女性との関係を疑われないよう、女性に対して通信記録の削除を求めたと認定し、訴追する方針を決めていた。
一方、捜索の際に発行人のエリック・マイヤー氏の母親が「私の家から出て行け!」などと警察に激高し、翌日に心臓発作で死亡した。AP通信によると、レコード紙とマイヤー氏は今年4月、捜索は言論弾圧で、母親の死も招いたとしてコーディ容疑者らを相手に民事訴訟を起こした。
レコード紙への捜索に対しては、米国内でメディア業界を中心に警察に対する非難が上がっている。
マイヤー氏は13日、米紙ワシントン・ポストに対して、コーディ容疑者は捜索自体についても罪に問われるべきだとした上で「(警察は)間違っていた。捜索はすべきではなかった」と述べた。米ABCニュースによると、米国の非営利組織「報道の自由財団」の幹部も警察による捜索は「犯罪行為だ」と指摘した。【ニューヨーク中村聡也】
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