フランスで路上生活者など社会的弱者への救済活動に尽力した故アベ・ピエール神父が、1970年代末から2005年にかけて7人の女性に対し性的暴行やセクハラなどを繰り返していたことが、同氏が創設した福祉団体「エマウス」が17日発表した調査報告書で明らかになった。他にも被害者がいるとみられる。ピエール神父はフランスで最も尊敬された人物の一人で、裏の顔の暴露に、カトリック教会やフランス社会に衝撃が広がっている。
ピエール神父は07年に94歳で死去した。エマウスに昨年、被害者を名乗る女性から神父による生前の性的暴行を告発する情報が寄せられ、暴力防止などを手がける企業「エガエ」に調査を依頼した。
その結果、エマウスの関連団体の職員やボランティア、知人など、少なくとも7人の女性から、胸を触られたり、わいせつな言葉をささやかれたりする被害の証言を得た。80年代初頭に被害を受けた女性は当時16~17歳だった。
報告書によると、被害者のほとんどはピエール神父の活動の賛同者で、神父の正義や公平さを追求する姿と、女性への振る舞いの差に戸惑ったという。
調査報告書は、神父と被害者の年齢差や、上下関係、神父の社会的地位、ある種の偶像崇拝が被害を助長したと分析している。
ピエール神父は第二次大戦後の49年にエマウスを創設。54年冬には、厳寒にこごえる路上生活者数千人へのシェルターの提供を呼びかけ、救済運動が広がった。生涯の大半を奉仕活動にささげ、フランス人が尊敬する人物を尋ねるアンケートで常に上位に入った。
エマウスは調査報告を受け、「私たち組織は、証言し、現実を明らかにした人たちの勇気に敬意を表す。彼女たちを信じ、彼女たちの側に立つ」とのコメントを出し、調査を続ける方針を発表した。
フランスカトリック教会はX(ツイッター)に、「ピエール神父は世界中にすばらしい影響を与えた。生活が困難な人々に対する、すべての人の責任感を目覚めさせ、貧しい人への目をあらためさせた。だがその地位によって、必要な真相究明が免除されることはない」と投稿した。【ブリュッセル宮川裕章】
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