11月の米大統領選に向けて中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催中の共和党全国大会で17日、副大統領候補に指名されたJ・D・バンス連邦上院議員(39)が受諾演説を行った。バンス氏は、自身を起用したドナルド・トランプ前大統領(78)の「米国第一主義」を称賛。中国製品の流入で米国の製造業が衰退したとの認識を示し、「中国共産党が米国市民を搾取するのを止める」と強調するなど、対中強硬姿勢も鮮明にした。
バンス氏は、13日に銃撃を受けたトランプ氏について「暗殺未遂に遭っても決然として、次の瞬間には国家の団結、癒やしを訴えた」と持ち上げた。一方で、党内の反トランプ派を意識して「意見の違いは強さにつながる。最善の解決策のために議論することを恐れない。それが今後4年間の共和党だ」と結束を訴えた。
また「ラストベルト(さびついた工業地帯)」にある中西部オハイオ州の貧困家庭に育った自身の生い立ちを紹介し、「(首都)ワシントンにいる支配階級に見捨てられた地域だった」と指摘。ラストベルトにある東部ペンシルベニア、中西部ミシガン、ウィスコンシンという大統領選の接戦3州に言及しながら、「(政治に)忘れられてきたコミュニティーの人たちに約束する。私は自分が歩んだ道を決して忘れない副大統領になる」とアピールした。
一方、民主党のジョー・バイデン大統領(81)が上院議員時代に賛同した中国への最恵国待遇付与や、不法移民の流入が、米国の労働者の雇用環境を傷つけたと指摘。「安価な中国製品と(不法移民の)安い労働力、そして中国の(原料で製造された合成麻薬)フェンタニルで米国はあふれかえった」と述べ、中国に対する問題意識を強く示した。
さらに日本などを念頭に「同盟国には負担を共有してもらう。米国の納税者の寛大さを裏切る国に(米軍の軍事力への)ただ乗りは許さない」と訴える場面もあった。
バンス氏は19日にミシガン州で、トランプ氏とともに副大統領候補として初の選挙集会に臨む。ベンチャー企業への投資で築いた人脈を生かした資金集めも期待されている。
民主党はバイデン大統領の出馬の是非を巡る混乱が続いており、副大統領候補のテレビ討論会の日程調整は民主党候補が確定した後に進める見通しだ。
共和党大会は18日に最終日を迎え、トランプ氏が大統領候補の指名受諾演説に臨む。13日の銃撃事件を受けて、「米国の団結」の重要性を強調する方針だ。【ミルウォーキー秋山信一、八田浩輔】
J・D・バンス(James David Vance)氏
1984年8月、米中西部オハイオ州生まれ。幼少期に両親が離婚し、薬物中毒の母に代わって祖父母に育てられた。高校卒業後、海兵隊入りし、イラクに派遣された。オハイオ州立大卒、エール大法科大学院修了。弁護士事務所やベンチャー企業への投資会社に勤務。2016年に白人労働者の窮状を描いた回想録「ヒルビリー・エレジー」がベストセラーとなった。22年の連邦上院選で初当選し、1期目。学生時代に知り合ったインド系の妻ウーシャさんとの間に子3人。結婚を機に祖父母のバンス姓を名乗った。
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