米東部バーモント州の薬局に置かれていた「オキシコンチン」の錠剤=2001年7月19日、AP

 処方薬を通じて麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の中毒被害を拡大させたとして多数の訴訟を抱える米製薬会社「パーデュー・ファーマ」を巡り、米連邦最高裁は27日、被害者に補償金を支払うことなどを盛り込んだ和解案を認めない決定を下した。これにより、同社の破産計画は白紙に戻った。

 和解案はパーデュー社が自治体のオピオイド対策や被害者救済に最大60億ドル(約9640億円)を充てる代わりに、同社の創業者一族が法的責任を免れることが柱だった。連邦最高裁は、連邦破産法でそのような免責は「認められていない」と指摘。9人中5人の判事がこの決定を支持した。

 パーデュー社は1996年にオピオイド入りの鎮痛剤「オキシコンチン」を発売。依存症リスクを把握した後も積極的に売り込み、中毒者を急増させた。同社は2019年に日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を裁判所に申請。21年に和解案が承認されたものの、創業者一族を不当に保護しているとして、司法省が連邦最高裁に見直しを求めていた。

 米国では99~19年に、約24万7000人が処方されたオピオイドの過剰摂取で死亡した。連邦最高裁は判決文で、パーデュー社が「この危機の中心にいた」と指摘している。

 米国ではオピオイドの処方に関する規制が強まると、同様の効果が得られるヘロインが違法に流通。その後、オピオイドの一種である「フェンタニル」が出回るようになった。オピオイド危機は今も深刻で、昨年は薬物の過剰摂取で推計10万人超が死亡。その4分の3がオピオイドによるものだった。【ニューヨーク中村聡也】

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