中国の大手出前「美団」が展開するドローン配送。アプリで注文すると、ドローンが箱の中に入った食品を運んできた=広東省深圳市で2024年4月2日、小倉祥徳撮影

 中国南部の広東省深圳市にある商業・オフィス複合施設前の広場。大手出前「美団」のアプリでアイスミルクティーを注文して15分ほど待つと、低いプロペラ音とモーター音を響かせながら、白色のケースを運んだドローンが上空に姿を現した。コンテナ型の「基地」のような設備に着陸すると、上部が開いて内部に納まった。設備に備え付けられた端末に自分の携帯番号の下4桁を入力すると、ケースから注文した冷えたミルクティーが出てきた。

 中国メディアによると、美団のドローン配送は2021年に試験導入が始まり、23年末時点で深圳中心に25地点で本格展開する。基地に届いた食事をさらにバイクで配送していた中年男性は「近くの別地点含めて、1日50件ぐらい注文がある」と話した。

 大手だけではない。深圳に研究開発拠点を構える14年創業の「ゼロゼロ・ロボティクス」は23年、人工知能(AI)技術で被写体の位置を正確に測定する超軽量カメラドローンを米欧で発売した。すると、ネット交流サービス(SNS)投稿向けに自撮りできる機能などにより、人気に火が付き、10万台以上を売り上げた。

 記者が試したところ、ボタン操作一つで手のひらから飛び立ち、こちらが歩いたり走ったりしても、事前に指定したプログラムに沿って、距離や角度を自動調整しながらドローンもついて来た。身ぶり手ぶりの動きでもドローン操作が可能だ。

超軽量カメラドローンを操作する「ゼロゼロ・ロボティクス」の黄康さん。手ぶりでも操作が可能だ=広東省深圳市で2024年4月2日、小倉祥徳撮影

 同社は今年3月、日本向けに99グラムとさらに軽量化した新製品の先行予約を始めた。1台5万9980円からと安くはないが、約1カ月で1・8億円を売り上げたという。日本事業責任者の黄康さん(36)は「操作が難しい普通のドローンとはまったく違う。ライバルはいない」と自信を見せる。

 中国は地域を問わずスマートフォン決済が普及するなど、身近なハイテクサービスが世界に先行してきた。だが、近年はこれが一段落。中国政府は政策支援を続けるが、半導体や電気自動車など多額の初期投資が必要な分野が増えており、イノベーションを生み出すベンチャー企業の減少も指摘される。

 深圳では乗客を運ぶドローン「空飛ぶクルマ」の商用化も数年後に控える。足元の中国経済は停滞感が強いが、ハイテク新製品・サービスの投入が再び活性化の契機となるかが注目される。

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