政権与党「国民の力」が惨敗した韓国総選挙。同党の重鎮候補が出馬した地方選挙区の取材中、外回りする陣営の運動員が記念写真を撮り合っている場面を目撃した。「こんなに緊張感がないのか」と目を疑ったが、この候補は結局、僅差で野党候補に敗れた。
対照的な熱気だったのが、若くして与党の代表を務め、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との対立の末に新党を立ち上げた李俊錫(イ・ジュンソク)候補(39)の陣営だった。遊説会場は子供連れの30~40代を中心とした有権者であふれ、ツーショット撮影を求める人々が百メートル以上列をなす、アイドルのライブさながらの光景も。当初、2大政党の間で存在感が埋もれ、当選が絶望的とみられていた李氏は劇的な逆転勝利を収めた。
首都圏は革新系、南東部は保守系。韓国は地域ごとに政党支持が大きく分かれ、「党公認さえ得られればどんな候補者でも当選できる」と揶揄(やゆ)される選挙区も多い。それでも、今回の選挙区取材を通じ、真摯(しんし)な選挙活動や有権者を引き付ける候補者の資質の重要性を改めて実感した。
投開票の前夜、李氏の演説を最前列でまっすぐに見つめる、男子小学生の表情が今も印象に残っている。「政(まつりごと)」の高揚感を子供たちに伝え、選挙を身近に感じさせる政治家が、日本にも現れるよう願う。(時吉達也)
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