イスラエルに対して無人機などによる大規模攻撃を仕掛けたイランが、イスラエルによる反撃に警戒を強めている。イランは「イスラエルの攻撃があればさらなる報復を加える」との立場を強調するとともに、「紛争激化は望んでいない」とも繰り返し発信。硬軟織り交ぜたシグナルを通じてイスラエルの抑止をはかろうとしている。
「もしシオニスト政体(イスラエル)がイランに対して悪行を行うなら、10倍の報復を受けるだろう」。イランメディアによると、イランの国防・外交を統括する最高安全保障委員会は14日、声明でこう強調した。さらに、今回の攻撃は軍や空軍基地を狙ったもので、民間インフラへの攻撃を避けたとし、「必要最小限」の規模だったと主張した。
イランとイスラエルは近年、代理勢力による攻撃や暗殺作戦などを続けており、両国の争いは「影の戦争」と呼ばれてきた。だが、イランは今回、イスラエルに対して直接攻撃を行い、「イスラエルとの対立が新たな段階に入った」(イラン革命防衛隊のサラミ司令官)ことを示した。イラン指導部は強硬発言を繰り返すことで、イスラエルに紛争激化のコストを想起させ、反撃を抑止する狙いがあるとみられる。
また、イランはこれ以上紛争を拡大させる意思がないことも繰り返し発信している。アブドラヒアン外相は14日以降、エジプトやサウジアラビアなどの中東諸国や欧州連合(EU)、ロシア、インドなどと相次いで電話協議を実施し、今回の攻撃は抑止を目的とする限定的なものだったことなどを説明。イラン外務省のカナニ報道官も15日、「イランは地域の緊張が拡大することを望んでいない」と語った。
イランメディアによると、テヘランなど一部の都市では14日以降、イランの報復を祝う市民が路上に繰り出し、国旗を振る姿が見られたという。ただ、イスラエルの反撃に対する懸念も広がっているようだ。テヘランに住むエンジニアの男性はロイター通信に「外国人が(イランから)退避しているのは、イスラエルが攻撃してくる兆候だ。我々はさらに孤立し、悲惨な状態になるだろう」と不安を口にした。【カイロ金子淳】
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