バイデン米政権が、ロシアの脅威を訴える欧州の小国モルドバとの関係を強化している。ブリンケン米国務長官は29日、首都キシナウでサンドゥ大統領と会談しエネルギー分野などでの支援を表明した。10月には親欧米派のサンドゥ氏と親ロシア派の候補者の対決が見込まれる大統領選と、欧州連合(EU)加盟に向けた国民投票が同時に実施される。モルドバが「岐路」にさしかかる中、米国はサンドゥ政権を支える姿勢を鮮明にしている。
人口約250万人のモルドバは旧ソ連構成国で、ロシア軍が侵攻するウクライナの西隣に位置する。旧ソ連地域と欧州をつなぐ地政学的な要衝だ。国内の東部には親露派が実効支配する「沿ドニエストル共和国」があり、1500人規模のロシア軍が駐留している。
サンドゥ政権はロシアによる政権転覆を警戒していることに加え、エネルギー面でのロシア依存からの脱却も課題となってきた。天然ガスはロシアから供給されていたほか、国内の電力供給の7割を担う主力の発電所も沿ドニエストル共和国にある。このため米国の資金援助を受けながらガスの供給元の多様化や、隣国ルーマニアとの送電線整備を進めてきた。
また大統領選と国民投票が近づく中、ロシアがインターネット上で「偽情報」を拡散しているとの指摘があり、対策も急務となっている。
ブリンケン氏は今回の会談で、エネルギー面での支援と偽情報への対策として、1億3500万ドル(約212億8000万円)の援助を表明。ブリンケン氏は記者会見で「(援助により)モルドバの人々がロシアの干渉に抵抗し、自由で公正な選挙を実施し、EUや西側諸国との統合への道を歩む能力が強化される」と述べた。サンドゥ氏は「ウクライナとEUは、強く民主的なモルドバを必要としている。モルドバは安全保障に貢献する信頼できるパートナーになる」と語った。【ブリュッセル岡大介、ワシントン松井聡】
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