野党主導で進む立法院権限強化法案に反対するデモに参加した人たち=台北市の立法院周辺で2024年5月28日午後4時4分、林哲平撮影

 台湾の立法院(国会)で28日、立法院の権限を強化する法案が国民党など野党勢力の賛成多数で可決した。法案は議会で答弁・証言を拒否した際に罰則を科す「議会侮辱罪」を刑法に盛り込むなどの内容。野党勢力が少数与党の民進党を押し切った形だが、審議が拙速だと批判する若者ら約1万5000人が立法院そばで反野党デモを行うなど対決色が高まっている。

 1月の立法委員選挙(定数113)の結果、民進党は51議席にとどまり少数与党に転落。中国に融和的な最大野党・国民党(52議席)と台湾民衆党(8議席)が連携して、20日に発足した頼清徳政権に対抗する形となっている。

 野党側は民進党・蔡英文前政権が新型コロナウイルス対策など重要政策の審議で十分な答弁を行わなかったと批判。政府職員や民間人が議員の質問に答えなかったり、反論したりすることを禁止し、違反者には罰金などを科す改正法案を3月上旬までに提出した。

 一方、民進党は企業秘密なども暴露される恐れがあり、民間人を含む幅広い人が罰則を受ける可能性を指摘。議論が尽くされないまま、野党が採決を強行しようとしているとして、委員会への審議差し戻しを要求した。17日には議場で与野党議員が乱闘になり、議員6人が負傷した。

立法院の権限を強化する法案の採決を進める野党勢力の立法委員ら(奥)。手前は法案に反対する与党・民進党の立法委員ら=台北市の立法院議場で2024年5月28日午後1時21分、林哲平撮影

 28日には議場で民進党議員が反対のシュプレヒコールを上げる中、採決が進められ国民党と民衆党の議員の賛成により法案が可決された。今後、総統による公布を経て施行されるが、行政院(内閣)が再審議を求める可能性もある。

 台北市中心部の立法院そばを走る青島東路では審議が行われる日に合わせて野党に対する抗議デモが開かれ、「議論がないのは民主主義ではない」などとプラカードを掲げた。呼びかけたシンクタンクによると、参加者は当初の数千人から24日には10万人に増加。通りの名前や立法院周辺の道路を埋め尽くした参加者を上空から見た様子が羽を広げた鳥に似ていることから「青い鳥運動」と名付けられた。

 野党側が可決を目指すと言明していた28日には、台湾各地の15の市や県でデモが発生。新北市の会社員、呉沐成さん(29)は「国民党が数の多さを頼みに、気ままに法案を通過させることが心配だ。議会が持つ権力は乱用されるべきではない」と話した。【台北・林哲平】

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