熊本県上天草市の地域おこし協力隊、明瀬智博さん(36)は、釣り具ブランド「46 AMAKUSA(しろう あまくさ)」を立ち上げ、今月ネットショップをオープンした。天草晩柑(ばんかん)を練り込んだワームや、地鶏「天草大王」の羽を使った毛針など環境に優しい独自色のある釣り具を発信する。根底にあるのは、天草の豊かな自然を守り、地域を活性化したいという思いだ。その夢が、一歩前進した。【野呂賢治】
――普段はどのような活動を。
上天草市の地域おこし協力隊として、釣りを切り口とした観光事業の展開、海岸や海中のゴミ拾い活動などをしています。他にも、海の生態系にとって重要な藻場の再生も手がけています。
――どうして地域おこし協力隊に。
熊本市生まれですが、両親が天草出身のため、幼少期から毎週のように天草に足を運び、自然の中で遊び育ってきました。熊本市内の大学を卒業後、就職で熊本を離れましたが、休暇で帰省する際は天草方面に釣りに行くなど常に天草の自然がそばにあったんです。
転機は2018年ごろでした。天草で遊漁船を営んでいた知り合いが後継者不足で困っているとの話を聞き、過疎化の問題を実感しました。以降「地域おこし」や「地域貢献」に気持ちが傾き、勤続10年を機に協力隊になることを決意しました。
――「46 AMAKUSA」について教えてください。
海岸や海中のゴミ拾いをする中で、自然界で分解されない釣り糸や根掛かりしたプラスチックのルアーなどに怒りを感じることもありました。そんな中、この豊かな環境を守るため「環境に優しい天草発の釣り具を」との考えに至りました。
「46 AMAKUSA」は晩柑ワームやアジ釣り用の毛針などを販売しています。アミノ酸系が主成分のワームは海中で2~3日で分解されます。毛針も地元で廃棄される地鶏の天草大王の羽を使用しています。他にも解体された古民家の廃材を用いた和製ルアー「餌木」など、まだ量産化は難しいですが、将来的には雇用も創出したいと考えています。
――これからの目標は。
天草の自然に育てられたので、その恩返しがしたい。協力隊になったのも、釣り具ブランドを起こしたのも、根底にあるのはこの気持ちです。来年3月までは協力隊としての任期があり、その後、事業が軌道に乗るかはわかりませんが、天草のための活動は続けていきたいと考えています。
明瀬智博(みょうせ・ともひろ)さん
1987年9月、熊本市生まれ。大学卒業後、大手機械メーカーに就職した。岡山県や福岡県などで勤務し、勤続10年を機に転職を決意し、2021年10月に上天草市の地域おこし協力隊に着任した。今年1月には釣りや食事、宿泊などすべてがパッケージされている観光サービス「天草つろう旅」事業を実現。「46 AMAKUSA」は今年2月の大阪フィッシングショーにも出展した。
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