地震の傷痕が残る宇土櫓に見入る来場者ら=熊本市で2024年4月14日午前10時29分、中村敦茂撮影
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 熊本地震の発生から8年となる14日、地震で損傷し、解体復旧工事が進む熊本城の国指定の重要文化財、宇土櫓(うとやぐら)が特別公開された。訪れた人は崩れた屋根や壁の様子に目を凝らし、被災前の姿を思い起こしながら熊本のシンボルの復活を願っていた。

 宇土櫓は本丸の西北側にあり、三重5階地下1階の壮大なつくりで「第三の天守」とも呼ばれる。江戸初期ごろの建築とみられ、築城当時の様子を保つ唯一の多重櫓だ。現在は修理のための囲い「素屋根」に覆われており、2024年1月から本格的な解体工事が進む。今後、瓦や部材の調査を経て再建工事に移り、32年度の完成予定だ。

 訪れた人は素屋根の内部に入って櫓の周囲を巡り、瓦の落ちた屋根やしっくいのはがれた壁を間近に見ることができる。歴代城主の家紋が入っている鬼瓦や軒丸(のきまる)瓦など、歴史的遺産としても見どころいっぱいだ。

 宇土櫓に幼い頃から愛着があったという熊本市北区の奥村隆志さん(77)は「痛ましい姿を見て涙が出た。復旧後の雄姿を早く見たい」と話した。地震で自宅が半壊した同市中央区の会社員、高橋由紀さん(30)は「水道もガスも電気も止まり避難所生活も経験した」と振り返り、宇土櫓の「傷ついても美しい姿に心を打たれた」と見入っていた。

 大分県別府市から来た小野恭平さん(33)は「ここまで近くで見られるのは貴重。また復旧の進捗(しんちょく)を見に来たい」と話した。

 宇土櫓の特別公開は今後も予定され、5月は大型連休中の3~5日の3日間、6月以降は毎月1回(第2日曜)に公開される。熊本城の入園料(大人800円、小中生300円)が必要。【中村敦茂】

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