原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定を巡り、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が文献調査の受け入れを表明した10日、文献調査が進む北海道神恵内村からは歓迎の声が上がった。同じく文献調査が行われている寿都町も調査地拡大を求めている。ただし、両町村長が求める「議論の全国展開」に至っているとは言えず、両町村での文献調査への影響は限定的だ。【片野裕之、金将来】
神恵内村の高橋昌幸村長はこの日、「受け入れを決断されたことに心から敬意と感謝を申し上げたい」などとする談話を発表した。全国に複数の調査地が出ることで「ベスト」な選択ができるとし、「さらに新たな調査地区が出てくることを期待する」と続けた。
寿都町は事実上、調査地拡大が文献調査の次の段階である概要調査に向けた要件の一つになっている。文献調査終了後、住民投票で概要調査受け入れの賛否を問うとする条例があり、片岡春雄町長は調査地が全国に複数あることを住民投票実施の前提に挙げている。事前に町民向け学習会も開く方針だ。
片岡町長は3月の町議会一般質問で「地層処分の全国的な議論の広まりがあった中で学習会がなされていく必要がある」と答弁し、調査地の拡大を求めていた。
玄海町の判断が道外での調査の口火を切ることになるとはいえ、寿都、神恵内両町村の調査開始からすでに3年半以上が経過。23年9月に長崎県対馬市が「市民の合意形成が不十分」として調査受け入れを拒否した経緯もある。今後も全国で受け入れ自治体が増えるかは見通しが立たない。
片岡町長は報道機関にコメントを出す予定だったが、10日夜までに発表がなかった。
概要調査の実施に反対を表明し続けている鈴木直道知事は10日の定例記者会見で「玄海町の受け入れ判断についてコメントは差し控える」と述べた。一方、「必ずしも国民的議論になっていない。国とNUMO(原子力発電環境整備機構)が全国で説明すべきで、全国的な機運が高まらない要因でもある。小さな町や自治体一つが責任を背負うことになってはいけない」と国の姿勢に苦言を呈した。
現時点で、寿都町全域と神恵内村南端の一部を概要調査の適地とするNUMOの報告書案が完成するめどは立っていない。内容を審査する資源エネルギー庁の審議会で、専門家から文章や地図の修正を求める意見が出ているほか、1月の能登半島地震など直近の災害で得られる新たな知見をどのように報告書に盛り込むかの議論も行われており、課題は山積されている。
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