日本に永住帰国した樺太(現ロシア・サハリン)残留邦人の70代女性=北海道旭川市=が、中国残留邦人等支援法に基づく一時金を不支給とした国の処分の取り消しを求めた控訴審判決で、札幌高裁は10日、原告敗訴とした1審・札幌地裁を取り消し、一時金の支給を認めた。女性が支給要件である「残留を余儀なくされた者」に該当すると判断した。
原告の女性は1952~53年ごろ、樺太で日本人の両親の間に生まれた。両親は戦後、集団引き上げの機会を逃し、その後もソ連政府の出国制限などで帰国できなかった。女性は条件緩和で99年に永住帰国したが、2015年の一時金申請は19年に却下された。
1審判決は「原告の父親の希望で樺太に残ったと推認できる」として、「残留を余儀なくされた者」に該当しないと判断した。
これに対し、佐久間健吉裁判長(斎藤清文裁判長代読)は「母親は(1957年の)夫の死亡時、帰国を強く望んでいたが、5人の子を1人で養っていく必要があり、日々の生活を維持するためにソ連国籍を取得した。結果、日本への出国許可を得ることができなくなった」と指摘。母親の監護養育下にあった女性も残留を余儀なくされた者と認めた。
また、同じ境遇の兄は生まれ年が支給要件を満たしていることから受給しており、「出生年月日の違いだけで兄と全く異なる処遇とするのは、支援法の目的や一時金の趣旨に沿わないと言わざるを得ない」とも述べた。
厚生労働省は「国側の主張が認められず、厳しい判決と受け止めている。今後の対応は判決内容を十分検討し、関係機関とも協議の上、決定したい」とコメントした。【伊藤遥】
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