企業が中途採用で提示する年収が増加傾向にある。就職情報大手のマイナビ(東京都)が10日発表した中途採用・転職活動の定点調査(1~3月)によると、約8割の企業が年収の引き上げを実施したり、検討したりしていた。質の高い人材の獲得競争が激化しているとみられる。
調査では、中途採用時の年収に関して回答した855社のうち、37・1%が年収を引き上げ、43・6%が引き上げを予定していた。増減幅を答えた488社の平均年収は489万1000円で、上げ幅は59万8000円だった。
業種別の平均年収は「IT・通信・インターネット」のIT業界が68万3000円増の532万1000円で最多。上げ幅は人手不足が深刻な「不動産・建設・設備・住宅関連」が96万8000円と最も高く、引き上げ後の年収は510万1000円だった。
調査を担当したマイナビキャリアリサーチラボの朝比奈あかり研究員は「質の高い人材を確保するために、経験者や即戦力となる人材を求めて募集時の年収を引き上げている」と分析する。
企業側は人手不足を強く感じている。3月に中途採用活動をした企業の63%が正社員が不足していると回答。特に20代、30代の正社員が不足していると答えた企業はそれぞれ71・2%、69・5%と高かった。
3月の中途採用実施率は、回答した2182社の44・3%に上った。
業種別では、IT業界が54・7%で最多。飲食店などの「フードサービス」は前年同月比20・7ポイント増の50%と大幅に増えた。「医療・福祉・介護」も53%と高く、いずれも慢性的な人手不足に悩まされているとみられる。最も低かったのは「マスコミ・広告・デザイン」で、同1・7ポイント減の28%だった。
一方で、個人の転職活動実施率は3・8%で前年から0.6ポイント減少した。特に20代で転職活動が減ったという。大企業を中心とした大幅な賃上げで、一時的に人材の流動性が鈍化した可能性がある。【中島昭浩】
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