性的な意図でアスリートを狙った盗撮被害が後を絶たない。2004年アテネオリンピックのバレーボール女子日本代表で、栗原恵さんと「メグカナ」コンビと呼ばれた大山加奈さん(39)も、かつて盗撮に悩まされた。「アスリートに自衛を求めるのも、『有名税だ』と我慢を強いるのも違う」。大山さんが盗撮撲滅に向けた思いを語った。【聞き手・青木絵美】
盗撮を初めて意識したのは中学生の時です。全国大会に行き、観客席で着替えていたら、コーチが飛んで来て「撮られているからやめろ」と言われました。とはいえ着替えの場所がなく、トイレに移動しました。
その頃、よく観戦に行ったVリーグの試合では、客席の男性が女子選手のお尻をカメラでアップにして追っているのを見ました。当時は「表に出る人はそういうリスクがあるのか。仕方ないのかな」と思う程度でした。
後に自分がVリーグのチームに入り、仲の良かった別チームの選手がトイレで盗撮被害に遭っているのを聞き、ショックを受けました。自分が出場したVリーグの試合を赤外線カメラで撮られ、インターネットに画像が出回っているのを見たこともありました。
トイレの盗撮被害を受け、チームのマネジャーはトイレ内をチェックするようになりました。自分たちでも試合後のヒーローインタビューを待つ間、コート内でストレッチをする時にはお尻や股の部分にタオルを掛けて隠しました。
現在のVリーグでは、観客がいる中でストレッチをやらないことになりましたが、選手がリカバリーのために取り組む大事なストレッチの時間を狙うとは、一体何をしに来ているのかと思いました。
日本代表の時には一時、ユニホームがおへその見える丈の短いデザインになりました。私はそれが嫌でしたが、最初は言えず、スパイクを打つ度におへそを隠そうと上着の裾をパンツに入れて直していました。
選手は選んでもらわないと試合に出られないし、監督の言うことが絶対。今振り返ると、選手時代は思ったことを言う感覚がなく、我慢して受け入れる、変な耐性ができていたと思います。その後、「プレーに支障がある」ということを伝えたら、丈の長いユニホームに変わりました。
日本で女性スポーツというと、体格やスピードを男性と比較されて「女子は面白くない」と言われ「競技以外で付加価値を付けるべきだ。そうでないと見てもらえない」と言われることもあります。
ですが、海外でそうした見方はなく、試合に行くと客席で写真を撮っている人はあまりいませんでした。激しいブーイングを受けるなど海外ならではの苦労もありましたが、観客にとってスポーツは日常の延長線上にあり、純粋に競技を楽しんでいる印象でした。日本でも女性スポーツの競技の価値が高まるといいなと思います。
「撮られるのは、そんな格好をしているからだ」とアスリートに自衛を求めるのも、「有名税だ」と我慢を強いるのも違います。悪いのは撮影する側だ、と伝え続けることが大事だと思います。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。