1月の能登半島地震の被災地では一時、11万4000戸余りが断水した。4カ月がたった今、被害が大きかった石川県の奥能登地方の約4000戸ではまだ続いているものの、それ以外では解消したとされる。ところが、解消した地域でも住宅によっては水道が使えないという。どういうことなのか。
一つ一つ水漏れの箇所を特定
4月下旬、石川県能登町で大阪市水道局から応援に入った中村公彦・品質管理担当課長らが、住宅を1軒ずつ回っていた。各戸に設置されている止水栓に金属製の長い棒状の器具を差し込んで耳を当てる。
ある住宅前では「シャーシャー」という音が聞こえたという。
「こんなにはっきり水が漏れている音は、なかなかない」
他の住宅を調査していた複数の職員も駆けつけ、音を確認し、水道管の水漏れしている所を特定した。「地道な作業ですが、こうした作業を一つずつ積み上げていって水が使えるようになるんです」
災害担当の内閣府や県によると、奥能登地方では最大で輪島市の約1万1400戸、珠洲(すず)市の約4800戸、能登町の約6200戸、穴水町の約3200戸が断水していた。
それが、復旧工事が進んだことで、4月26日時点で輪島市で約1420戸、珠洲市で約2320戸、能登町で約210戸、穴水町で0戸に減った。
珠洲市と輪島市では浄水場が被災し、河川から水を取り込む取水口や浄水場から配水池まで送水する水道管が壊れるなどし、復旧が遅れた。能登町でも、浄水場から送水する水道管が土砂崩れにより想定以上に破損し、修繕に時間がかかったという。
能登町建設水道課の大畑幸夫課長補佐は今後の見通しについて、こう説明する。
「断水の解消が96%まで進み、終わりが見えてきている。何事もなければ、間もなくの解消は可能だが、漏水が見つかり修繕が必要であれば、もう少し先に延びるかもしれません」
だが、断水の解消が間近なのに、大畑さんの表情はさえない。
というのも、断水が解消されても水道が使えない家庭が少なくないからだ。
水道メーターから先は各家庭が修理
県などが公表している水道の被害状況というのは、浄水場から各地域へ水を送る水道管の「本管」や、本管から各家庭に備えられている水道メーターまでの「引き込み管」の断水状況が記されている。「断水の解消」とは「本管、引き込み管とも修理が全て終わった」ことを指す。
本管も引き込み管も公共設備なので、損傷すれば自治体が修理することになる。
一方、水道メーターから住宅の蛇口までの水道管が壊れていたら、本管や引き込み管が復旧していても水が出ない。
水道メーターから先の管は各家庭の財産となるので、住民は各自で業者に依頼して修理しなければならない。
「どこの業者に頼めばいいのかわからない。業者に連絡がつかない」。そんな相談が能登町には1日に数件、寄せられている。
能登町の大畑さんによると、その背景には、いつも利用しているなじみの業者に修理を頼んだが順番待ちとなり、他の手の空いている業者にお願いしたくてもできない状況がある。
さらに、地元以外の業者だと、十分な修理をしてもらえなかったり、高額な料金を請求されてしまったりという不安もあるという。
各家庭の財産となっている水道管の水漏れを少しでも改善しようと、県や国土交通省は修理に応じる業者を調べ、4月10日から県のウェブサイトで公開している。
ただ、高齢者の中にはウェブで検索することが難しい人もいる。能登町ではこうした相談があれば、リストの業者を紹介している。
大畑さんは「各家庭の断水解消が100%になるまで、壊れている所を見つけて、一つずつ直してもらうしかない」と話した。【砂押健太】
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