公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 東京オリンピック・パラリンピックを巡る談合事件で、公正取引委員会が広告最大手の電通グループ(東京都港区)などに対する行政処分を視野に調査を始めた。関係者への取材で判明した。独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令の適否を検討する。課徴金の算出は「不当な売り上げ」をどこまで認定するかがポイントとなり、最大で数十億円規模に上る可能性もある。

 公取委が調査しているのは、五輪テスト大会の計画立案業務の競争入札を巡る談合事件。電通グループなど8社が2018年2~7月ごろ、落札予定者を事前に決定し、互いの競争を制限したとされる。組織委員会が発注し、契約総額は約5億円だった。

 公取委は刑事罰を前提とする「犯則事件」として扱い、23年に関係者らを独禁法違反(不当な取引制限)容疑で検事総長に刑事告発した。事件の裁判は今も続いている。刑事罰とは別に公取委が独自の判断で科す行政処分の調査は、1審判決が出そろった段階で着手するのが通例だが、今回は前倒しした模様だ。犯則事件の調査で証拠を一定程度集めていることから、報告命令などで各社に改めて説明を求めるとみられる。

 公取委が独禁法違反を認定して課徴金の納付を命じる場合、原則として不当な売り上げの10%を算出する。テスト大会の計画立案業務の契約総額は約5億円だが、テスト大会と本大会の運営業務は契約総額が430億円超。事件の裁判では、計画立案業務の談合で振り分けた構図のまま運営業務も受注する仕組みだったと認定した判決もあり、公取委が調査の結果、運営業務も不当な売り上げと判断すれば、課徴金は数十億円規模に上る可能性もある。

 8社は広告やイベント会社で、電通グループの他は事業会社の「電通」(港区)▽博報堂(同)▽ADKホールディングス(同)▽東急エージェンシー(同)▽セレスポ(豊島区)▽セイムトゥー(千代田区)▽フジクリエイティブコーポレーション(江東区)。ADKは談合を自主申告したため刑事訴追や課徴金を免れる「課徴金減免制度」(リーニエンシー)が適用されているが、公取委は全容解明に向けて調査対象にしたとみられる。【渡辺暢】

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