「ちゃんとしとってもらえれば、助かったかも分からんしね……。自然を相手に人命を預かる仕事なら、安全第一でしてもらいたかった」
北海道・知床半島沖で2022年4月、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故で死亡が確認された林善也(よしや)さん(当時78歳)=佐賀県有田町=の妻(82)は、運航会社「知床遊覧船」社長、桂田精一容疑者(61)の逮捕を聞き、胸の内を明かした。
妻によると、林さんは明るく元気な人だった。結婚してからも、大きな病気やけがをしたこともなかったという。ゴルフが好きで、北海道にもゴルフ仲間2人と一緒に訪れ、事故に巻き込まれた。
「3人ともゴルフ好きで、スポーツマンだった」と妻。「みんな元気で、海で放り出されて亡くなるような人たちじゃなかった。場所や時期が違ったり、船が出ていたりしなければ、みんな元気に帰ってきたでしょうね」と悔やむ。
事故後、桂田容疑者がおわびの言葉を直接伝えてきたり、訪れてきたりすることはなかったという。桂田容疑者の逮捕は「そのくらいは、しょうがないですよね」といい、今後の捜査や裁判などで責任の所在を明らかにしてほしいと思っている。「今後、こういう事故が起きてほしくない」。妻が強く願う。
事故から2年が過ぎ「いろいろ言っても、生き返ってくるわけじゃないから。諦めないとしょうがない」と気持ちを切り替えようとも思っている。23年には林さんの母親が103歳で亡くなったといい「旦那も100歳くらいまでは生きると思っていた。今は親子で会っているのかな」。妻が思いをはせた。【山口響】
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