研究の経緯などを説明する山形大農学部の笹沼恒男准教授(左)ら=山形県鶴岡市で2024年3月29日、長南里香撮影

 ラーメン用小麦の有力品種の開発に向け、山形大農学部(山形県鶴岡市)が農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)と共同研究に取り組んでいる。原料を外国産頼みから県産に転換し、「ラーメン県」をさらに盛り上げるのが狙い。2030年ごろまでに品種登録したい考えだ。

 開発中なのは、たんぱく質の含有量が外国産に匹敵する高さで、雪や病害に強く、気候変動に対応できるわせ品種だ。県内で栽培されている「ゆきちから」(農研機構開発品種)よりさらに高品質で、麺に加工した際に「つるつる、もちもち」の食感になる新品種を目指す。

 山形大は20年に小麦の品種育成に知見がある農研機構と共同研究契約を締結。大学付属農場で既に品種交配を始めている。山形市の世帯当たりの外食ラーメン支出額が日本一になる一方で、県内での23年の小麦生産量は268トンと東北で最少にとどまり、ラーメン用の大部分に外国産が使われているという。研究に取り組む笹沼恒男准教授(植物遺伝・育種学)は記者会見で、有力品種の開発が地域振興の鍵になると意義を強調した。

 地元生産者からは、新品種の開発を歓迎するとともに、農家が作付けを拡大しやすくなるような国や県の施策が不可欠との声が上がる。鶴岡市の中山間地で10年前から小麦を栽培している叶野幸衛さん(72)は「小麦は米よりも労力が少なくてすむが、湿気に弱く、水田での生産は難易度が高い。米の転作でも取り組めるような環境整備が重要で、オール山形で推進してほしい」と訴えている。【長南里香】

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