沖縄県警本部=遠藤孝康撮影

 またも、事件が――。沖縄で米海兵隊員が5日、女性に対する不同意性交等致傷の容疑で書類送検された。米軍基地が集中する沖縄では6月に米兵による性的暴行事件が相次いで発覚したばかり。女性の尊厳を踏みにじる事件がやまない事態に市民の怒りは一層高まる。

 全国の米軍専用施設面積の7割が集中する沖縄県では、米軍関係者による事件が繰り返し起こり、6月25日と28日にも報道がきっかけで米兵が性的暴行事件で検挙されていたことが相次いで明らかになった。いずれも県には伝えられず、米軍への抗議や再発防止の要請は後手に回った。県警によると、今回の事件が発生したのは、こうした報道の前だったが、検挙や起訴された時点で県が強く再発防止を要請していれば、事件の発生は防げた可能性もある。

 6月下旬に発覚した2事件が発生したのは2023年12月と24年5月。23年12月の事件では、県警が24年3月に米空軍兵を書類送検し、3月27日に不同意性交等などの罪で起訴された。5月の事件は発生直後に米海兵隊員が逮捕され、6月17日に不同意性交等致傷罪で起訴された。

米軍関係者による性的暴行事件を巡る最近の動き

 外務省は報道で明らかになる前に、両事件とも捜査当局からの情報提供を受けて米側に綱紀粛正を申し入れていたが、沖縄県には伝えていなかった。その後、県外でも米兵による性的暴行事件が次々と明らかになり、「隠蔽(いんぺい)だ」との批判に加え、被害者支援や再発防止の取り組みを妨げることへの懸念の声が上がった。

 今回の事件では沖縄県警が5日に米兵を書類送検し、同日中に県に伝えた。沖縄大学人文学部の高良沙哉(さちか)教授(憲法学)はこうした対応に「性暴力事件では初期の被害者のケアが重要で迅速な対応が求められる。改善はあったが、本来は当たり前のことだ」と強調し、「基地と住民の距離はとても近く、性暴力の危険がある中で平和な共存などできない。兵士への教育を徹底するなど米軍と日本政府は事件をもっと重く受け止めるべきだ」と訴えた。

 基地問題に詳しい沖縄国際大の前泊博盛教授(日米安保論)は今回の事件について「6月下旬に明らかになった事件が公表されていれば被害を防げたかもしれず、国民の人権よりも政治を優先してきた結果だ」とこれまでの政府や県警の対応を改めて批判し、「プライバシーを守りながら事件発生を伝えることはできるはずだ。政府は米軍の性犯罪を問題視して防止策を講じる必要がある」と話した。【平川昌範、日向米華、長岡健太郎】

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