自民党総裁選5人目の出馬表明は、茂木敏充幹事長(68)となりました。これまで3年にわたって岸田総理を支えた茂木氏ですが、4日に打ち出したのは、その岸田政権で決めてきた数々の政策の見直しや方針転換です。


■防衛増税・政活費は“転換”主張

自民党 茂木敏充幹事長
「まず私が目指す新しい政権。目標を掲げ、チームを束ね、結果を出す。結果にコミットします」

結果を出すと強調。自信の背景にあるのは華麗な経歴です。経済産業大臣、経済再生担当大臣、外務大臣の重要閣僚を歴任。2021年からは党のナンバー2、幹事長として権力を握ってきました。麻生氏とともに岸田政権を支え“三頭政治”とも呼ばれていましたが、会見で打ち出したのは、“岸田路線”からの転換でした。

自民党 茂木敏充幹事長
「増税ゼロの政策推進、これを実行していきます」

岸田総理が決めた防衛増税を停止し、新たな財源を確保するとしました。さらに、政党から議員に支給され、使い道が公開されない政策活動費についても。茂木氏は、おととしだけでも9億7000万円を受け取っていました。

自民党 茂木敏充幹事長
「政策活動費について、その上限をゼロ円。すなわち廃止します」


■“茂木式”資金移動 今後は?

自分自身の政治とカネ問題については、寄付という形で資金を移動させ、裏金作りをしているのではと追及を受けてきました。

(Q.茂木敏充政策研究会から茂木敏充後援会総連合会に金を移動させたことが判明している。国会では『茂木方式』と呼ばれ、裏金化しているのではと批判がある。これを改める考え、規制する考えはあるか)

自民党 茂木敏充幹事長
「そういう疑念を受けてはいけない。来年度から私の政治団体から後援会連合会に寄付は行いません」

政治とカネの問題を断ち切る姿勢を打ち出しましたが、他の陣営からは冷ややかな反応が…。

河野陣営
「政策活動費は自分が一番恩恵を受けてた身なのに、幹事長やめてから『廃止します』なんて言われても『幹事長をやってるうちに廃止しろ』という話だ」


■“支持1%”打開策は?

一方、国民の期待はというと、世論調査の数字は最下位グループ。わずか1%です。低いとされる人気と知名度が課題です。

いら立ちをあらわにすることも多い、茂木氏。そんな一面を封印して臨むのが今回の総裁選です。

キャッチコピーは“意外と敏充”。親しみやすさを意識し、SNSにも笑顔の写真を発信するなどイメージ戦略に腐心しています。

自民党 茂木敏充幹事長
「一般の方から見ると『近寄りにくい』『何でも完璧にできるんじゃないか』こういうふうに見られるところが『意外と料理ができる』とかですね『意外とガーデニングが好き』だったりとか」

支持集めへのハードルは他にもあります。会食を重ねてきた麻生氏からは支持を得られず、自ら率いる茂木派からは加藤元官房長官も出馬の意向。新たな総裁に“意外と敏充”が選ばれる可能性はあるのでしょうか。

茂木陣営の議員は、同僚議員に電話でこう支持を訴えます。

自民党茂木派 鈴木隼人衆院議員
「アメリカの大統領選でトランプさんになる可能性もある。日本が国益をかけてトランプさんとやりあえる人って誰なんだと。私は茂木さんしかないだろうと。そうそう本物の政治」


■岸田政権の方針“転換”勝算は

茂木氏は、岸田政権が進めてきた、防衛増税の「見送り」や、子育て支援金「追加負担停止」を主張し、さらに、幹事長として対応が問われた政策活動費についても「廃止」を打ち出しています。

ただ、現職の幹事長ということで、与党内からはこんな受け止めも出ています。

石破陣営
「今まで3年間、幹事長で何やってたんだ。これについて行こうという人はいるのかね」

冷ややかな声が聞かれる一方で、警戒する声も聞かれました。

小林陣営
「(政策活動費廃止のような)とがったことを最初に言わないといけなかった。うちの陣営も戦略的にやらないと埋没してしまう」

(Q.人気の面で出遅れ感もありますが、茂木陣営は、どのあたりに勝機を見出しているのでしょうか)

テレビ朝日政治部与党キャップ・岡香織記者
「決選投票にさえ残れば地方票の比重が小さくなる。国会議員票をより多く集めれば逆転できるという思惑があるのではないか。仮に相手が若手の場合、世代交代を嫌がるベテランを中心に、自分に流れると見ているのでは」

大越健介キャスター
「茂木氏は外務・経産といった主要閣僚も歴任していて、経歴という面ではピカイチと言っていいと思います。ところが、これまで自民党は厳しい局面になると、経歴よりもフレッシュさを優先して総裁を選ぶ歴史を持っています。例えば、リクルート事件などで政治不信の最中にあった1989年。この時は海部俊樹さんが新しい総裁に選ばれました。2001年に低支持率のなかで辞任した森総理の後任選びでは、小泉純一郎さんが総裁になりました。2人とも閣僚経験はありましたが、いずれも党三役などの経験はなく、実力者中の実力者ではありませんでした。今回も政治とカネをめぐって政治不信の最中にあります。現職の自民党幹事長である茂木氏に追い風がなかなか吹かないのも、過去の事例を見るとうなずけるように思います」

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