非常に強い台風10号は28日、鹿児島県沖を北上し、九州南部に接近した。暴風、波浪、高潮の特別警報が発表された鹿児島県では広範囲に避難指示などが出た。高い海面水温を背景に台風10号は日に日に勢力を強め、気象庁は「最強に近いクラス」として警戒する。専門家は「広範囲で大雨と強風が続く可能性がある」と、台風から離れた地域でも早めの備えを呼びかける。
鹿児島県は台風接近に備え、27日に災害対策本部を設置し、塩田康一知事が「今回の台風は広範囲で被害が発生するおそれがある」と早めの避難を促すとともに、不要不急の外出を控えるよう呼びかけた。
県などによると、28日午後5時過ぎ現在で、台風によるけが人は重傷1人、軽傷3人。奄美市で60代男性が強風にあおられて転倒し、足を骨折した。喜界町(喜界島)では停泊中の漁船2隻が沈没した。離島地域の三島村の202世帯369人に警戒レベルが最も高い「緊急安全確保」が発令された他、鹿児島市など28市町村の約52万世帯約101万人に避難指示が出た。
鹿児島市のJR鹿児島中央駅でも断続的に強い風が吹き抜けた。在来線は始発から運転を見合わせた一方で、夜まで運転を続けた九州新幹線の乗り場には多くの利用者の姿が見られた。
友人の結婚式に参加するため予定を早めて広島市から新幹線で地元に帰ってきたという会社員の二木俊輔さん(26)は「帰って来れて良かった」と胸をなでおろし、台風について「何事もなく過ぎ去ってほしい」と願った。鹿児島県南九州市から車で迎えに来たという二木さんの父親(55)は「来るときは風で車体が揺れた。安全運転で帰りたい」と話し、「今晩どうなるか。様子見ですね」と警戒していた。
宮崎県内でも5人の軽傷者が出た。宮崎市佐土原町一帯では28日午後、突風が発生したとの通報が相次ぎ、車の横転や飛んできた瓦、割れたガラスで10~80代の男女4人が軽傷。看板が飛ばされるなどした携帯電話店の男性従業員(27)は「ブォーッという風の音がして、ロックのかかった排煙窓が開いたのでびっくりした。駐車場に、壊れた看板の破片や瓦が飛び散っていた」と話した。
宮崎県では8日に最大震度6弱の地震が発生しており、宮崎地方気象台は地震の影響で地盤が弱くなっている可能性があるとして警戒を呼びかけている。
JR九州は29日午後までに、特急などを含む全ての在来線で順次運転を取りやめる。【宝満志郎、下薗和仁、塩月由香、山口響】
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