「どうか早く救出されてほしい」。愛知県蒲郡市の一家5人が生き埋めとなった土砂崩れから一夜明けた28日、現場近くの住民らは家族の無事を願い、消防や自衛隊の捜索の様子を祈るような表情で見守った。【荒木映美、塚本紘平、永海俊】
近くに住む杉浦明芳(あきよし)さん(70)は、安否が分かっていない70代男性と地域の祭りの準備を長年一緒に務めていたという。「自分は酒を飲まないのに酒席で冗談をよく言い、一緒に楽しむような人だ」と無事の再会を願った。
現場には、家族の友人らも駆け付けた。70代男性と数日前に会話をしたという男性は「朝のニュースで知った。ショックだ」と言葉少なだった。家族全員と交流があるという男性は28日朝、一家宅に電話をしたら通じず、「嫌な予感がして様子を見に来たら……」と表情を曇らせた。
土砂崩れがあった現場は、ハザードマップで住民に注意を促す土砂災害警戒区域に指定されていなかった。同区域は土砂災害防止法に基づき、崖崩れや地滑りなどが発生する恐れのある区域を都道府県が指定する。崖崩れの場合、高さ5メートル以上かつ傾斜度30度以上の斜面であることが指定要件となる。
愛知県の担当者によると、今回の現場は傾斜度の要件を満たしていなかったため、指定に向けた調査が実施されなかったという。
蒲郡市の鈴木寿明市長は「こうした大規模な土砂崩れは予期していなかったが、裏山がある場合、全く(土砂災害の)可能性がないわけではない。想定以上の雨量などいろいろな状況があって今回の災害が起きた。原因追及をしていきたい」と話した。
愛知県は同日、蒲郡市に災害救助法を適用することを決めたと発表した。27日にさかのぼって適用する。
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